説明

NT−3:TrkC結合の阻害および神経芽腫などの癌の処置へのその適用

本発明の対象は、化合物のニューロトロフィン3(NT−3またはNT3)と、または細胞外ドメインもしくはTrkC受容体と相互作用する能力、および/または腫瘍細胞、特に、神経芽腫で発現されるTrkC受容体の細胞内ドメインの二量体形成を阻害する能力に基づいて抗癌化合物をスクリーニングするためのインビトロ法に関する。本発明はまた、ニューロトロフィン3の発現レベルの測定に基づいて、転移性癌もしくは予後の悪い癌の存在を予測するため、または抗癌処置の有効性を決定するための方法に関する。本発明はさらに、腫瘍細胞によりニューロトロフィン3を過剰発現する神経芽腫または癌を処置するための薬剤としてのキットおよび化合物を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
技術分野
本発明の対象は、化合物のニューロトロフィン3(NT−3またはNT3)と、または細胞外ドメインもしくはTrkC受容体と相互作用する能力、および/または腫瘍細胞、特に神経芽腫で発現されるTrkC受容体の細胞内ドメインの二量体形成を阻害する能力に基づいて抗癌化合物をスクリーニングするためのインビトロ法に関する。本発明は、またニューロトロフィン3の発現レベルの測定に基づいて、転移性癌もしくは予後の悪い癌の存在を予測するため、または抗癌処置の有効性を決定するための方法に関する。本発明は、さらに腫瘍細胞によりニューロトロフィン3を過剰発現する神経芽腫または癌を処置するための薬剤としてのキットおよび化合物を含んでなる。
【0002】
背景技術
TrkC/NT−3受容体/リガンド対は、ニューロン死が神経栄養因子の制限の際の生存シグナルの欠如による不履行(defalt)によって起こるとする従来の神経栄養説の一部と考えられている。ここで、本発明者らは、TrkCは依存性受容体であり、それ自体、不死化細胞においてNT−3の非存在下でカスパーゼ依存性のアポトーシス細胞死を誘導し、NT−3が存在すればアポトーシス誘導活性は阻害されることを示す。このTrkCのアポトーシス誘導活性は、カスパーゼの媒介によってTrkCの細胞内ドメインが切断され、アポトーシス誘導断片が放出されることによるものである。この断片は、カスパーゼ−9依存性のメカニズムを介してアポトーシスを誘導する。最後に、本発明者らは、NT−3の離脱により引き起こされる後根神経節(DRG)ニューロンの死が、TrkCによるアポトーシス誘導活性が拮抗作用を受ける場合に阻害されることを示す。従って、NT−3の非存在下でのこのニューロン死は、生存シグナルの欠如のためばかりでなく、非結合型のTrkC依存性受容体の能動的なアポトーシス誘導活性のためでもある。
【0003】
従来の神経栄養説では通常、ニューロンの生存がニューロトロフィンなどの神経栄養因子に依存すると提案している(1,2)。また、この説は、これらの神経栄養因子が制限を受けた際に誘発される死が生存シグナルの欠如によるものであると述べている(3)。ニューロトロフィンには、NGF、BDNF、NT−3、およびNT−4/5が含まれる(2)。これらのタンパク質は、特に、過剰に産生されてそれらの標的に十分結合することができないニューロンの発達上の多大な損害を制御することで、神経系の発達に極めて重要であることが示されている。現在の神経栄養モデルには、主要なニューロトロフィン受容体、TrkA、TrkB、およびTrkCが、ニューロトロフィンが結合した際にPI3K/Akt経路およびRas/MEK/MAPK経路を介して生存シグナルを生成することが含まれている(3)。この結合は自然に生じるニューロンのアポトーシス死を阻害すると考えられる。しかしながら、この説の弱点は、発達中のニューロンの「不履行のアポトーシス状態」の分子の性質が理解されていないということである。ニューロンに、細胞死シグナルが能動的に生成されるメカニズムが存在する可能性がある。リガンドが結合した際に、腫瘍壊死受容体ファミリーの細胞死受容体はカスパーゼの活性化と多くの細胞種の細胞死を誘発するが、神経系にそれらが関与している証拠はほとんどない。しかしながら、最近、リガンドが利用できるか否かによって、いくつかの受容体が全く反対の二つのシグナル伝達経路を誘発する(すなわち、リガンドが存在すれば、これらの受容体は分化、誘導(guidance)または生存の陽性シグナルを伝達し、リガンドが存在しなければ、アポトーシス細胞死の能動的なプロセスを誘導する)ということを裏付ける所見があった。これらの受容体は依存性受容体と呼ばれ、p75ntr、DCC(deleted in colorectal cancer)、UNC5H、Patched、Neogenin、およびチロシンキナーゼ受容体RET(4−10)が含まれる。個々のリガンドの非存在下で見られるこれらの受容体のアポトーシス誘導活性は、神経系の発達中のニューロンの移動または局在の十分なテリトリーを指示するためにも重要であるが、さらに重要なことに、成体において腫瘍成長を調節するとも推測されている。この活性はインビボにおいて、発達中の脊髄における依存性受容体Patchedおよび神経上皮細胞の生存(4)、ならびに結腸直腸の腫瘍形成におけるnetrin−1受容体DCCおよび/またはUNC5H(5)に関して具体的に示されている。この後者の場合では、netrin−1受容体は、リガンドが制限されている状況で増殖している腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することにより腫瘍の進行、すなわち、原発腫瘍の成長または転移性を阻害する腫瘍サプレッサーであることが示されている。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、NT−3に対する主要な同族受容体であるタンパク質チロシンキナーゼ受容体TrkCもまた依存性受容体であり、この依存性受容体TrkCがアポトーシスを調節することにより神経芽腫において腫瘍サプレッサーとして振る舞うという証拠を提供する。そして、進行性の腫瘍細胞にとっての選択的優位性は、TrkCをダウンレギュレーションする(これに関しては、TrkCの発現は予後(pronosis)の良い神経芽腫に関連している)か、または本発明者らの仮説であるNT−3の自己分泌過剰発現させるかのいずれかである。
【0005】
この問題は基礎知識として重要なだけでなく、治療法として極めて重要であり、実際に、これらのNT−3が高い腫瘍においてニューロトロフィン(neurothophin)3とTrkC依存性受容体との間の細胞外相互作用を阻害することは、NT−3の過剰発現に関連するか、または高い比(NT−3/TrkC)を示す腫瘍に対して腫瘍退縮を誘発するための興味深い戦略となる。
【0006】
このような癌の処置に使用することができる新たな化合物を特定および特性決定するための簡単かつ一貫した手段を提供することが特に望ましい。
【0007】
驚くべきことに、本発明者らは、神経芽腫細胞などのNT−3を発現する腫瘍細胞において、TrkC−NT3結合に拮抗作用を及ぼし得る化合物の存在下でインキュベートすると、TrkCがアポトーシスを誘導することを実証した。予備的な結果によれば、原発腫瘍の発生の軽減および転移性の抑制が示され、このような化合物は治療において転移性(metastasic)腫瘍の細胞死を誘発するため、従って、NT−3の過剰発現に起因する癌または高い比(NT3:TrkC)を示す癌の治療および/または予防のための有効な薬剤として使用可能であることが実証される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1A−1G:TrkCは依存性受容体である。HEK293T(A〜C)または13.S.24(D〜G)細胞をmockプラスミド(Mock)または発現プラスミドTrkA、TrkBもしくはTrkCでトランスフェクトした。(A)トリパンプルー排除により測定されたTrkCによる細胞死誘導。標準偏差を示す(n=3)。(B)TrkCはカスパーゼ活性の上昇を誘導した(Ac−DEVD−AFC基質の切断により測定)。一般的かつ強力なカスパーゼ阻害剤であるzVAD−fmkも使用した。(C)TrkCは、抗活性型カスパーゼ−3抗体を用いた免疫染色により測定されるように、カスパーゼ−3活性化を誘導する。代表的な画像を示す。定量値を標準偏差とともに示す(n=3)。(D)トランスフェクト細胞をFITC−VAD−fmkで標識した。対照として、キナーゼ不活性型(図4C参照)TrkC(TrkC D679N)もトランスフェクトした。代表的なフローサイトメトリー分析を示す。TrkCはカスパーゼの活性化を誘導するが、TrkAとTrkBはmockトランスフェクションと同様に振る舞うことに注意。(E〜G)Mock 13.S.24細胞またはラット(EおよびF)/ヒト(G) TrkCでトランスフェクトされた13.S.24細胞を漸増用量のNT−3(示されているようにラットTrkCでは0.5、1、2.5、5、10、および50ng/ml、ヒトTrkCでは10ng/ml)で処理した。(E)トリパンプルー排除により測定されたTrkCによる細胞死の誘導(上)。AktおよびErkのリン酸化を抗ホスホAktおよび抗ホスホErkを用いた免疫ブロットにより示す(下)。A ローディング対照を全Erkに対する免疫ブロットにより示す。(F)NT−3は、Ac−DEVD−AFC基質を用いることにより測定した際、TrkCにより誘導されるカスパーゼ活性を阻害する。ウエスタンブロットにより示されるように、試験条件が異なってもTrkC発現のレベルは同等であることに注意。(G)13.S.24細胞では、ラットTrkCではなくヒトTrkCが発現された。細胞死は活性カスパーゼ−3で標識された細胞を数えることにより測定した。比はmockトランスフェクションで検出されたものに対する各条件の活性カスパーゼ−3−陽性細胞として表す。標準偏差を示す(n=3)。
【図2】図2A−2D:TrkCはカスパーゼ基質である。(A)TrkCはインビトロにおいて主としてカスパーゼ−3により切断される。TrkCならびにTrkAおよびTrkBの、インビトロで翻訳された細胞内ドメインを、カスパーゼの非存在下または精製カスパーゼ−3またはカスパーゼ−8(0.3μM)とともにインキュベートした。オートラジオグラフを示す。(B)アスパラギン酸残基641および495が切断部位である。下のオートラジオグラフに示されるように、TrkC IC D495/D641N変異型はカスパーゼ−3により切断されない。(C)13.S.24細胞においてz−VAD−fmkの存在下または非存在下で、片方の(TrkC D495N、TrkC D641N)、または両方の(TrkC D495N/D641N)の切断部位にTrkC野生型または変異型が発現した。(D)半分離DRGを、未処理で(−)、またはBAFを含んでもしくは含まずにNT−3もしくはTrkC阻止抗体AF1404とともに一晩放置した。CおよびDでは、TrkC C末端に対する抗体を用いたウエスタンブロットにより、切断断片が見られた。Dの上は全長TrkCを示し、Dの真ん中は20kDa断片を示す。Dの下はローディング対照を示し、アクチンを表している。
【図3】図3A−3I:TrkC切断はアポトーシス誘導ドメインを放出する。(A−D)TrkCの一つまたは二つのカスパーゼ切断部位の突然変異はTrkCのアポトーシス誘導活性を阻害する。(A)Mockプラスミド(Mock)、TrkC、またはTrkC D495Nでトランスフェクトされた13.S.24細胞を、抗HA(HA−TrkC)抗体を用いたウエスタンブロット、SI 図5Aのような膜局在に関するFACS分析、および図IDのようなカスパーゼ活性の測定に関するFACS分析によって分析した。(B)単一または二重カスパーゼ部位変異体をHEK293T細胞にトランスフェクトし、図1Bのように、カスパーゼ活性を細胞溶解液におけるDEVD−AFC切断により測定した。(CおよびD)トリパンプルー排除(C)またはSI 図5B(D)のようなDNA縮合により測定した際、HEK293T細胞においてTrkC D495N/D641N変異体はアポトーシス誘導性ではない。標準偏差を示す(n=3)。(E)TrkCは825個のアミノ酸からなる。カスパーゼ切断部位はこの受容体の細胞質領域のD495とD641に位置する。EC、細胞外ドメイン、IC、細胞内ドメイン、TK、チロシンキナーゼドメイン、LRR、ロイシンリッチリピート、Ig、Igドメイン、C−rich:システインリッチドメイン、TM、トランスメンブランドメイン。(FおよびG)図1DのようなFITC−VAD−fmkに基づくカスパーゼ活性アッセイ(F)またはトリパンプルー排除(G)により測定されるように、カスパーゼ切断により放出された断片(496〜641)は、13.S.24神経芽細胞で発現された場合、強力な細胞死インデューサーである。標準偏差を示す(n=3)。(H)一次感覚ニューロンをNT−3で維持し、mockプラスミド(Mock)またはTrkC 496−641をコードするプラスミドでマイクロインジェクションを行った。72時間後に生存ニューロンを数え、最初にマイクロインジェクションを行ったニューロンに対するパーセンテージとして表した。平均値の標準誤差を示す(n=3)。(I)13.S.24細胞を、TrkC 496−641(またはエンプティーベクター)と、エンプティーベクター(Mock)、Bcl−2またはドミナントネガティブ(DN)カスパーゼ−2、−8もしくは−9のいずれかの発現プラスミドで同時トランスフェクトした。図1Dのように、カスパーゼ活性を測定することによりアポトーシスを測定した。カスパーゼ活性を、それぞれの同時トランスフェクション(Mock、Bcl2、Casp2DN、Casp8DN、およびCasp9DN)で、TrkC 496−641トランスフェクト集団と対照トランスフェクト集団の間の比で表す。標準偏差を示す(n=3)。
【図4】図4A−4G:NT−3欠如時のDRGニューロンの死滅はTrkCのアポトーシス誘導活性によるものである(AおよびB)。TrkC IC D641NはTrkCのドミナントネガティブ変異体として働く。HEK293T細胞をmockプラスミド(Mock)、mockプラスミドを伴うTrkC発現プラスミド、またはTrkC IC D641N発現プラスミドでトランスフェクトした。TrkC IC D641Nのドミナントネガティブ効果をトリパンプルー排除(A)または図IBのようなカスパーゼ活性アッセイ(B)により測定した。標準偏差を示す(n=3)。(C)10ng/mlのNT−3存在下または非存在下、PBK阻害剤(LY294002、10μM)もしくはMEK阻害剤(U0126、10μM)を添加して、または添加せずに、13.S.24神経芽細胞をTrkC野生型もしくはTrkCキナーゼデッド型(TrkCD679N)でトランスフェクトするか、またはTrkCとドミナントネガティブ変異体TrkC IC D641Nとで同時トランスフェクトした。AktおよびErkのリン酸化を、それぞれ抗ホスホAkt抗体および抗ホスホErk抗体を用いたウエスタンブロットにより可視化した。AktキナーゼおよびErkキナーゼのレベルを、それぞれ膜を抗全Akt抗体または抗全Erk抗体で再プロービングすることにより示した。TrkCの免疫ブロットも示す。FACE−Akt ELISA(Active Motif, Carlsbad, CA)を用いた場合にも同様の結果が得られた。(DおよびE)感覚ニューロンをNT−3またはNGFで維持し、mockプラスミド(Mock)、あるいはTrkC IC D641N(D)またはキナーゼデッド型TrkC IC D641N/D679N、Retのドミナントネガティブ変異体(すなわち、Ret IC D707N)もしくはTrkC IC(E)をコードするプラスミドでマイクロインジェクションを行い、NT−3またはNGFを伴わずにさらに増殖させた。72時間後に生存ニューロンを数え、最初にマイクロインジェクションを行ったニューロンに対するパーセンテージとして表した。DおよびEに示す実験は別々に行った。(F)DおよびEと同様に、感覚ニューロンをNT−3で維持し、内因性TrkC siRNAおよびTrkCまたはTrkC D495N/D641Nのいずれかでマイクロインジェクションを行い、NT−3の非存在下でさらに増殖させた。72時間後に生存ニューロンを数え、最初にマイクロインジェクションを行ったニューロンに対するパーセンテージとして表した。平均値の標準誤差を示す(n=3)。(G)TrkCまたはTrkC D495N/D641Nでトランスフェクトした13.S.24細胞においてAkt/Erkのリン酸化を測定したこと以外はCと同様。
【図5】図5A−5C:TrkCは依存性受容体として振る舞う。13.S.24(AおよびC)またはHEK293T(B)細胞をmock(Mock)、TrkA、TrkBまたはTrkC発現プラスミドでトランスフェクトした。(A)HAタグの付いたTrkA、TrkBおよびTrkCの膜局在を、抗HA抗体(aHA−PE)を用いたFACS分析により測定した。(B)トランスフェクト細胞を、ホルムアミド中75℃で細胞をインキュベートした後に抗一本鎖DNA抗体で標識した。アポトーシス細胞のDNAを75℃で変性させ、フローサイトメトリーにより分析した。FITC−抗体で染色した細胞のパーセンテージを示し、内部標準偏差を示す。(C)NT−3はTrkCにより誘導されるアポトーシスを阻害する。13.S.24細胞をmockまたはTrkCでトランスフェクトし、トランスフェクション3時間後および24時間後にNT−3(10ng/ml)またはzVAD−fmkを加えた。Bのように、細胞を抗一本鎖DNA抗体で標識することにより測定した場合、NT−3はTrkCにより誘導されるアポトーシスを阻害する。
【図6】図6A−6D:TrkCの切断はカスパーゼ−3またはp75ntrに依存せず、ヒトTrkCでも起こる。(AおよびB)TrkCを13.S.24細胞に、一般的なカスパーゼ阻害剤BAFもしくは特異的カスパーゼ−3阻害剤DEVD−fmk(A)のいずれかの存在下もしくは非存在下でトランスフェクトするか、あるいはカスパーゼ−3ドミナントネガティブ(Casp3DN)(B)で同時トランスフェクトした。また、対照として、この変異体において消失した切断バンドを示すためにTrkCD495N/D641Nもトランスフェクトした。(C)ヒトまたはラットTrkC発現構築物を13.S.24細胞にトランスフェクトした。ヒトならびにラットTrkCを認識するC末端に対する抗体を用いたところ、切断断片が見られ、矢印で示す。ラットTrkC(A)で示されるように、ヒトTrkCも一般的なカスパーゼ阻害剤BAFの存在下でもはや切断されない。(D)13.S.24細胞をTrkCでトランスフェクトするか、またはTrkCおよびp75ntrで同時トランスフェクトし、TrkCの切断をCと同様に分析した。p75ntr免疫ブロットにより検出された高レベルのp75ntrの存在がTrkC切断に対して有意な影響を示さないことに注意。さらに、p75ntrを発現することができないDaoy細胞におけるTrkCトランスフェクションも、同様のカスパーゼ依存性のTrkC切断の出現と関連している(データは示されていない)。
【図7】依存性受容体の概念を示す図である。
【図8】依存性受容体としてのTrkCを示す図である。
【図9】神経芽腫(NB)の標的としてのTrkCを示す図である。
【図10】26のNB腫瘍サンプルからのNT−3およびTrkC RNAを定量的PCRにより測定した。
【図11】ヒト腫瘍細胞系統のスクリーニング:RT−PCRによるNT−3発現の定量。数種のNB細胞系統をNT−3およびTrkCの発現を測定することによりスクリーニングした。CLB−Ge1およびCLB−Vol.Mo細胞系統をそれらの高いNT−3発現により選択し、IMR32細胞を陰性対照細胞系統として選択した。確認は免疫化学によって行われた。
【図12】NT−3 siRNAはCLB−Ge1細胞のアポトーシスを誘導する。
【図13】NT−3とTrkCの相互作用の干渉はNT−3の高いNB細胞のアポトーシスを誘導し、NT−3阻止抗体(AF 1404)はNT−3発現NB細胞系統および病期4の患者サンプルにおいてアポトーシスを誘導する。
【図14】NT−3とTrkCの相互作用の干渉は、TrkCを介してアポトーシスを誘発する。TrkCドミナントネガティブ(TrkC IC D641N)のトランスフェクションはAF1404により誘導されるアポトーシスを遮断する。
【図15】図15A−15F:ひな鳥モデルにおいて、NT−3/TrkC相互作用の阻害は、腫瘍の進行と、NT−3発現NB細胞の転移性とを軽減し、NT−3/TrkCの遮断はNBの成長と転移を阻害する。(A)B〜Eで用いたひな鳥実験モデルを表す図である。10日目にCAMにIMR32またはCLB−Ge2細胞を移植し、α TrkC抗体またはイソ型抗体(対照抗体)を11日目および14日目に加えた。17日目に腫瘍および肺を採取した。(B−C−D)原発腫瘍成長およびアポトーシスに対するα TrkC抗体の効果である。(B)非処理CAMまたはイソ型抗体(対照抗体)もしくはα TrkC抗体のいずれかで処理したCAMに生じたCLB−Ge2原発腫瘍の代表的な画像である。(C)Bに記載した個々の原発腫瘍の代表的なTUNEL染色画像。B.スケールバーは100μmに相当する。(D)非処理腫瘍に対する原発腫瘍の大きさを示す定量分析である。(E)肺転移性に対するα TrkC抗体の効果。α TrkC抗体もしくはイソ型抗体のいずれかの腫瘍内注射(11日目および14日目)または非処理から2日後の、IMR32またはCLB−Ge2細胞が浸潤した肺を持つ胚のパーセンテージ。(F)原発腫瘍に対するNT−3 siRNAおよびTrkC siRNAの効果。10日目にCAMにCLB−Ge2細胞を移植し、11日目および14日目に漿尿膜管にNT−3、TrkCまたはスクランブルsiRNAを静注した。17日目に原発腫瘍を採取した。DおよびFでは、エラーバーはs.e.mを示し、は非処理腫瘍と比較して両側マン−ホイットニー検定により算出したp<0.05を示す。Eでは、はカイ2乗検定により算出したp<0.01を示す。
【図16】図16A−16D:NT−3は病期4のNBの大部分で発現する。(A)全86人の病期4 NB患者の腫瘍からの全RNAに対してQ−RT−PCRにより測定されたNT−3発現および比(NT−3/TrkC)(20人の病期4 NB患者を図17に示す)である。中央値に相当する値の2倍より多いNT−3を発現する腫瘍のパーセンテージを示す。(B)NT−3発現の低い(左のパネル)および高い(右のパネル)病期4患者からの腫瘍生検および骨髄分離細胞に対する代表的なNT−3免疫組織化学(それぞれ図1Aに点線のグレーの矢印と黒い矢印に相当する)である。挿入:抗体無しの対照を表す。(C)NB細胞系統の一部においてQ−RT−PCRにより測定されたNT−3発現および比(NT−3/TrkC)である。HPRT発現を内部対照として用いた。(D)CLB−Ge2、CLB−Vo1Mo、およびIMR32細胞に対する代表的なNT−3免疫組織化学である。挿入:一次抗体無しの対照である。右上のパネル、一次抗体とともに過剰量の組換えNT−3(r−NT−3)を加えた場合のNT−3の免疫染色である。上の二つのパネルは膜の透過処理無し(Triton X−100無し)で行った免疫組織化学を示し、下の二つのパネルは細胞の透過処理(Triton X−100有り)後に行ったことに注意。
【図17】NT−3は病期1、2、3、4のNBの大部分で発現する。全部で69人のNB患者(病期1が14人、病期2が22人、病期3が13人、病期4が20人)の腫瘍からの全RNAに対してQ−RT−PCRにより測定されたNT−3およびTrkC発現。中央値に相当する値の2倍より多いNT−3を発現する腫瘍のパーセンテージを示す(上のパネル)。HPRT発現を内部対照として用いた。下のパネルに比(NT−3/TrkC)を示す。
【図18】図18A−18F:NT−3自己分泌ループの乱れはNBの細胞死を誘発する。(A)スクランブルsiRNA(siRNA scr.)またはNT−3 siRNA(siRNA NT−3)でトランスフェクトして24時間後のCLB−Ge2細胞系統に対するNT−3免疫染色。挿入:一次抗体無しの対照である。(B−C)非トランスフェクト細胞(対照)またはスクランブルsiRNA(siRNA scr)もしくはNT−3 siRNA(siRNA NT−3)のいずれかでトランスフェクトした後、相対的カスパーゼ−3活性アッセイ(B)またはToxilightアッセイ(C)を用い、IMR32およびCLB−Ge2細胞系統における細胞死誘導を定量した。(D−E)(α TrkC)で処理した細胞または抗TrkC抗体を含まない細胞(対照)で、相対的カスパーゼ−3活性アッセイ(D)またはTUNELアッセイ(E)を用いてCLB−Ge2、CLB−Vo1MoまたはIMR32細胞系統の細胞死誘導を定量した。TUNELアッセイに関して、TUNEL染色の代表的な視野を示す(上のパネル:対照細胞、下のパネル:α TrkC(「α TrkC」は抗TrkC抗体のこと)で処理した細胞)。(F)外科生検から直接分離し、処理の存在下(+)または非存在下(−)で24時間平板培養した病期4のNB腫瘍細胞に対するα TrkC抗体の効果。B〜Fにおいて、エラーバーはs.e.m.を示し、は対照と比較して両側マン−ホイットニー検定を用いることで算出したp<0.05を示す。
【図19】図19A−19B:NT−3/TrkC干渉は神経芽腫の細胞死を促進する。(A)(α TrkC)抗TrkC抗体、TrkC細胞外ドメイン(Fc−TrkC−EC)またはイソ型対照(対照抗体)のいずれかで処置した細胞において、相対的カスパーゼ−3活性アッセイによりCLB−Ge2またはIMR32細胞系統の細胞死誘導を定量した。エラーバーはs.e.m.を示し、は対照と比較して両側マン−ホイットニー検定を用いることで算出したp<0.05を示す。(B)病期4のNB患者から採取した腫瘍生検および骨髄から抽出したcDNAに対するRT−PCRによりNT−3およびTrkC発現を増幅し、アガロースゲル上で可視化した。
【図20】図20A−20E:NT−3/TrkC干渉はTrkCのアポトーシス誘導活性を促進する。(A)CLB−Ge2細胞をエンプティーベクター(対照)またはドミナントネガティブTrkC−IC D641Nをコードするプラスミドのいずれかでトランスフェクトし、24時間α TrkC 抗体有り(+)または無し(−)で処理した。スライド上にプレーティングした細胞のTUNEL標識により、細胞死を測定した。TrkC−ICD641N発現を抗末端TrkCウエスタンブロットにより管理した(下のパネル)。右のパネルに代表的な画像を示す。(B)TrkC 13.S.24を発現しない嗅覚神経芽細胞に対するウエスタンブロットによりTrkC siRNAの有効性を評価した。細胞をアポトーシスを誘導しないエンプティーベクター(対照)または切断不能TrkC D945N D641N二重変異体、およびスクランブルsiRNA(siRNA scr.)またはTrkC siRNA(siRNA TrkC)でトランスフェクトした。(C)スクランブルsiRNA、TrkC siRNA、NT−3 siRNAまたはTrkCとNT−3 siRNAの混合物のいずれかでトランスフェクトした後、相対的カスパーゼ−3活性アッセイを用いてCLB−Ge2細胞系統の細胞死誘導を定量した。(D)血清の非存在下、2μg/mlのα TrkC抗体、20nMのLy29402、100nMのU0126または100ng/mlのNT3で処理して16時間後に、CLB−Ge2細胞のホスホ−Aktおよびホスホ−Erkレベルをウエスタンブロットにより測定した。(E)一般的なカスパーゼ阻害剤BAFの存在下または非存在下、α TrkC阻止抗体で処理した細胞(または無処理)に対する、抗TrkC抗体を用いたウエスタンブロットによるTrkC切断バンド(20kDa、矢印で示す)の検出。AおよびCにおいて、エラーバーはs.e.m.を示し、は対照と比較して両側マン−ホイットニー検定を用いることで算出したp<0.05を示す。
【図21】図21A−21B:NT−3/TrkC干渉はTrkCのアポトーシス誘導活性を促進する。(A)CLB−Ge2細胞をエンプティーベクター(対照)またはドミナントネガティブTrkC−IC D641Nをコードするプラスミドでトランスフェクトし、24時間α TrkC抗体で処理(+)するか、または無処理とした(−)。トリパンプルー排除により細胞死を測定した。エラーバーはs.e.m.を示し、はカイ二乗検定で算出したp<0.01を示す。(B)IMR32細胞をpcDNA対照ベクター、BaxまたはTrkC発現構築物で一次的にトランスフェクトし、細胞死をToxilightアッセイ(左のパネル)またはTUNEL染色(右のパネル)を用いて測定した。代表的な画像を示す(下のパネル)。エラーバーはs.e.m.を示し、は両側マン−ホイットニー検定により算出したp<0.05を示す。
【図22】乳癌におけるNT−3の発現特性を定量的リアルタイムRT−PCRで調べた。82の腫瘍生検から抽出した全RNAを用い、QRT−PCRを行った。それらは腫瘍が乳房に局在している患者(N0)、液化リンパ節だけが関与している患者(N+M0)、および診断で遠位の転移を有する患者(M+)から得られたものである。特異的ヒトNT−3プライマーおよびヒトHMBS遺伝子(ヒドロキシメチルビランシンターゼ)に相当するプライマーを用いた。 ここでは、HMBSが、記載されているように(de Kok JBら (2005))、正常組織と乳房腫瘍組織間でmRNAレベルに若干の違いを示すことから、これを参照として用いた。 NT−3発現レベルの中央値を各サンプル群(N0、N+M0およびM+)で算出した。表は中央値の2倍に相当するレベルでNT−3を発現するサンプルの数およびパーセンテージを示す。
【発明の具体的説明】
【0009】
第1の態様において、本発明は、癌の予防または治療用の化合物を選択するためのインビトロ法を対象とし、該方法は、以下の工程を含んでなる:
a)ニューロトロフィン3またはその断片と、TrkC受容体またはその断片とを含む培地を取得する工程(ここで、
該ニューロトロフィン3またはその断片と、該TrkC受容体またはその断片とは、共に特異的に相互作用して結合対を形成することができ、および/または
該ニューロトロフィン3またはその断片は、該TrkC受容体またはその断片、特に該TrkC受容体の細胞内ドメインの二量体形成または多量体形成を誘導できる)、
b)該培地と、供試化合物とを接触させる工程、
c)ニューロトロフィン3またはその断片と、該TrkC受容体またはその断片との間の相互作用の阻害を測定し、および/または
該化合物が該TrkC受容体またはその断片の二量体形成または多量体形成、特に該TrkC受容体の細胞内ドメインの二量体形成を阻害するか否かを判定する工程、および
d)工程c)の測定が、該化合物の存在下でニューロトロフィン3またはその断片と、TrkC受容体またはその断片との間の相互作用に有意な阻害を示す場合、および/または
工程c)における判定が、該化合物の存在下で該TrkC受容体またはその断片の二量体形成または多量体形成、特に該TrkC受容体の細胞内ドメインの二量体形成に有意な阻害を示す場合
に、その化合物を選択する工程。
【0010】
本願において、ニューロトロフィン3とそのTrkC受容体の間の相互作用とは、好ましくはニューロトロフィン3レベルが高いために、ニューロトロフィン3依存性受容体により誘導されるアポトーシスを回避する選択的優位性を腫瘍細胞にもたらす相互作用を表すものとする。
【0011】
従って、この相互作用の阻害は、例えば、特に、競合的リガンド(該TrkC受容体の細胞外膜ドメインに対する抗体、モノクローナルまたはポリクローナル抗体など)の存在下、またはニューロトロフィン3と特異的複合体を形成することができる化合物(そのTrkC受容体の可溶性細胞外膜ドメインまたはその一部)の存在下で、ニューロトロフィン3とそのTrkC受容体との結合を完全にまたは部分的に阻害することによって得ることができる。
【0012】
好ましい実施形態においては、本発明による方法は、予防または治療される癌が、腫瘍細胞がニューロトロフィン3を発現もしくは過剰発現するか、または高い比(NT3:TrkC)を示す癌であることを特徴とする。
【0013】
別の好ましい実施形態においては、本発明による方法は、予防または治療される癌が神経芽腫または乳癌であることを特徴とする。
【0014】
別の好ましい実施形態では、本発明による方法は、予防または治療される癌が転移性癌、進行性癌(aggressive cancer)、または予後の悪い癌であることを特徴とする。
【0015】
別の好ましい実施形態においては、本発明による方法は、工程a)において、
該TrkC受容体断片が、ニューロトロフィン3と相互作用することができるTrkC受容体の細胞外ドメインまたはその一部、好ましくは、ヒト(humant)TrkCまたは1995年7月27日付けのGenbank A.N.AAB33111に示されているアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するその天然変異体の最初の429個のアミノ酸残基を含むN末端断片を少なくとも含んでなる細胞外断片を含んでなるか、またはそのものであり、および/または
該TrkC受容体断片が、ニューロトロフィン3の存在下で二量体または多量体を形成することができるTrkC受容体の細胞内ドメインまたはその一部を含んでなるか、またはそのものである
ことを特徴とする。
【0016】
別の好ましい実施形態においては、本発明による方法は、前記ニューロトロフィン3または/および前記TrkC受容体が哺乳類、特に、マウス、ラット、またはヒト、好ましくは、ヒトに由来することを特徴とする。
【0017】
別の好ましい実施形態においては、本発明による方法は、前記ニューロトロフィン3または/および前記TrkC受容体および/または供試化合物が直接または間接的に測定可能なマーカーにより標識されることを特徴とする。
【0018】
別の好ましい実施形態においては、本発明による方法は、工程c)において
ニューロトロフィン3またはその断片と、該TrkC受容体またはその断片との間の相互作用の阻害の測定がイムノアッセイ(特に、ELISAまたはイムノラジオ・メトリック・アッセイ(IRMA))、シンチレーション近接アッセイ(SPA)または蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって行われ、および/または
該TrkC受容体またはその断片、特に、細胞内ドメインの二量体形成もしくは多量体形成またはその阻害が免疫沈降またはFRETにより行われること
を特徴とする。
【0019】
別の特に好ましい実施形態においては、本発明による方法は、工程a)において、前記培地が、それらの表面膜で、内因性のまたは組換え型のTrkC受容体、特に該TrkC受容体の組換え細胞外ドメインを発現する細胞を含むことを特徴とする。
【0020】
好ましい実施形態においては、前記組換えTrkC受容体は、また前記TrkC受容体の細胞内ドメインも含んでなる。
【0021】
別の特に好ましい実施形態においては、本発明による方法は、工程a)において、前記培地が、前記TrkC受容体をそれらの膜表面で内因的に発現し、かつニューロトロフィン3を発現または過剰発現する腫瘍細胞を含むこと、ならびに工程c)において、供試化合物の存在下でのニューロトロフィン3と、そのTrkC受容体との間の相互作用の阻害が、その供試化合物の存在により誘導されるアポトーシスまたは細胞死により測定される、好ましくは、以下の実施例に示されるようなトリパンプルー染色法を用いて分析されることを特徴とする。
【0022】
好ましい実施形態においては、前記腫瘍細胞は、CLB−Ge1またはIMR32細胞系統などの確立された神経芽腫細胞系統からなる群から選択される。
【0023】
本発明はまた、癌の予防または治療用の化合物を選択するためのインビトロ法も対象とし、該方法は以下の工程を含んでなる:
a)内因性のまたは組換え型のTrkC受容体、または少なくともその細胞内ドメインを含んでなるその断片を発現する哺乳類細胞、好ましくは腫瘍細胞、より好ましくはそのTrkC受容体細胞内ドメインの二量体形成または多量体形成を呈する細胞またはそのTrkC受容体細胞内ドメインがニューロトロフィン3の存在下で二量体または多量体を形成することができる細胞を取得する工程、
b)該培地と、供試化合物とを接触させる工程(場合により、この培地はさらに、TrkC受容体の細胞外ドメインと相互作用することができるニューロトロフィン3またはその断片を含んでもよい)、
c)該TrkC受容体細胞内ドメインの二量体形成または多量体形成が供試化合物の存在下で阻害されるか否かを判定する工程、
d)場合により、供試化合物の存在が該哺乳類細胞の細胞死を誘導するか否かを判定する工程(例えば、トリパンブルー法による)、および
該化合物が該TrkC受容体またはその断片の二量体形成または多量体形成、特に該TrkC受容体の細胞内ドメインの二量体形成を阻害するか否かを判定する工程、および
e)工程c)の測定が、該化合物の存在下でニューロトロフィン3またはその断片と、TrkC受容体またはその断片との間の相互作用の有意な阻害を示す場合、および/または
工程c)における判定が、該TrkC受容体の細胞内ドメインの二量体形成または多量体形成の有意な阻害を示す場合、および/または工程d)における判定が該哺乳類細胞の細胞死を示す場合に、その化合物を選択する工程。
【0024】
第2の態様において、本発明は、原発腫瘍を有する患者において、原発腫瘍細胞を含む該患者の生検から、転移性癌または進行性癌、特に予後の悪い神経芽腫の存在を予測するためのインビトロ法を対象とし、該方法は以下の工程を含んでなる:
(a)該生検におけるニューロトロフィン3発現レベルまたは比(NT3:TrkC)を測定する工程。
【0025】
好ましい実施形態では、本発明による予測方法は、工程a)において、非転移性原発腫瘍生検または非進行性癌生検におけるニューロトロフィン3の発現に比べて、前記生検におけるニューロトロフィン3発現レベルの増加が、転移性癌または進行性癌の存在を示すことを特徴とする。
【0026】
より好ましい実施形態では、本発明による予測方法は、転移性または進行性癌の存在に関して、供試生検と非転移性または非進行性参照生検の間のニューロトロフィン3発現の比が2を超える、好ましくは、2.5を超える、3を超える、3.5を超える、4を超える、4.5を超える、および5を超えることを特徴とする。
【0027】
第3の態様において、本発明は、患者に対する抗癌処置の有効性をインビトロで判定するため、またはNT−3:TrkC結合の阻害に基づいて特定の抗癌処置に応答し得る患者の選択方法を対象とし、該方法は以下の工程を含んでなる:
(a)該被処置患者の原発腫瘍生検を取得する工程、および
(b)該生検におけるニューロトロフィン3発現レベルを測定する工程(ここで、該抗癌処置の有効性は該生検において測定されたニューロトロフィン3発現レベルの量の低下と相関しているか、または選択された該特定の抗癌処置に応答し得る患者が、処置前にそれらの生検で測定されたニューロトロフィン3発現レベルの量が対照患者のニューロトロフィン3発現レベルの量を有意に超えている、かつ場合により、ニューロトロフィン3発現レベルが該特定の処置後に低下した患者である)。
【0028】
好ましい実施形態においては、患者に対する抗癌処置の有効性をインビトロで判定するため、または特定の抗癌処置に応答する患者の選択方法は、該癌がニューロトロフィン3の過剰発現を誘導したこと、および/または転移性癌または進行性癌であることを特徴とする。
【0029】
好ましい実施形態においては、患者に対する抗癌処置の有効性をインビトロで予測するため、または判定するための方法は、測定されるニューロトロフィン3発現産物が、特に定量的リアルタイム逆転写PCR法により測定される、ニューロトロフィン3をコードするRNAであること、または測定されるニューロトロフィン3の発現レベルが、特に該ニューロトロフィン3タンパク質を特異的に認識することができる特異的抗体を用いた方法によるニューロトロフィン3タンパク質レベルの測定であることを特徴とする。
【0030】
好ましい実施形態においては、患者に対する抗癌処置の有効性をインビトロで予測するため、または判定するための方法は、原発腫瘍がNT−3を過剰発現するか、または高い比(NT3:TrkC)を示す癌からなる群から選択される癌、好ましくは、神経芽腫または乳癌の原発腫瘍であることを特徴とする。
【0031】
別の態様において、本発明は、癌の予防または治療用の化合物を選択するためのキットを対象とし、該キットは、
ニューロトロフィン3タンパク質と特異的に相互作用して結合対を形成することができるTrkC受容体タンパク質またはその断片、好ましくは組換えタンパク質と、
該TrkC受容体タンパク質と特異的に相互作用して結合対を形成することができるニューロトロフィン3タンパク質またはその断片、好ましくは組換えタンパク質と
を含んでなる。
【0032】
前記TrkC受容体もまた、好ましくは、マウス、ラット、またはヒトなどの哺乳類に由来するTrkC群から選択されることが好ましい。
【0033】
好ましい実施形態では、前記キットは、TrkC受容体を発現し、かつニューロトロフィン3を発現または過剰発現する腫瘍細胞、特に、好ましくは、CLB−Ge1またはIMR32細胞系統などの神経芽腫細胞系統からなる群から選択される転移性腫瘍細胞系統由来の細胞を含んでなる。
【0034】
別の態様において、本発明は、からなる群から選択される、薬剤としての化合物を含んでなる:
ニューロトロフィン3と、TrkC受容体との間の相互作用を特異的に阻害することができ、および/またはTrkC受容体またはその断片の二量体形成または多量体形成を阻害すること、特にTrkC受容体の細胞内ドメインを阻害することができる、TrkC受容体の細胞外ドメインまたはその断片を含んでなる化合物、
特異的にニューロトロフィン3またはTrkC受容体に対する、特にTrkC受容体の細胞外ドメインに対する、または該TrkC受容体の細胞外ドメインと相互作用することができるニューロトロフィン3断片に対するモノクローナル(ヒト化可能)またはポリクローナル抗体、
NT−3タンパク質を認識し、それと結合することができるTrkC受容体の可溶性細胞外ドメイン、および
細胞において、好ましくはインビボでNT3の発現を阻害することができるsiRNA(低分子干渉RNA)核酸。
【0035】
ニューロトロフィン3またはTrkC受容体などの哺乳類、例えばヒト、のアミノ酸配列は当業者によく知られている。これらのアミノ酸配列の例は、特定のドメインの場所とともに、ヒトニューロトロフィン3はAAA59953(1995年1月5日付け)またはヒトTrkCはAAB33111としてGenbankに見出すことができる。
【0036】
好ましくは、本発明の化合物では、TrkC受容体またはその断片の細胞外ドメインは、最初の300個のN末端アミノ酸残基、好ましくは、350個、375個、400個、410個、420個、および429個のアミノ酸残基を含んでなる。より好ましくは、NT3およびTrkCは、マウス、ラット、またはヒトなどの哺乳類に由来する。
【0037】
別の態様において、本発明は、患者、好ましくは、転移性神経芽腫または転移性乳癌患者において、転移性癌を識別するためのマーカーとしてのニューロトロフィン3の発現レベルの使用に関する。
【0038】
別の態様において、本発明は、患者において、TrkC依存性受容体により誘導されるアポトーシスを回避する選択的優位性を獲得した腫瘍細胞のアポトーシスまたは細胞死を、好ましくは、ニューロトロフィン3レベルを引き上げることによって誘導するための処置方法であって、それを必要とする患者に、ニューロトロフィン3と、そのTrkC受容体との間の相互作用を阻害することができる化合物、TrkC受容体の二量体形成または多量体形成を阻害することができる化合物、本発明による、または本発明の方法により選択された化合物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0039】
別の態様において、本発明は、患者において癌を予防または治療するための方法であって、それを必要とする患者に、本発明による、または本発明の方法により選択された化合物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0040】
本発明はまた、ヒトを含む哺乳類において癌の予防または治療用の薬剤の製造のための本発明による、または本発明の方法により選択された化合物の使用も含んでなる。好ましくは、前記癌は転移性癌または進行性癌である。
【0041】
より好ましくは、処置方法において、または本発明による化合物の使用において、前記癌は神経芽腫および乳癌からなる群から選択される。
【0042】
より好ましくは、処置方法において、または本発明による化合物の使用において、前記癌の原発腫瘍細胞はニューロトロフィン3を発現または過剰発現する。
【0043】
本明細書において「抗体」とは、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、ニューロトロフィン3タンパク質またはその受容体と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子を意味する。
【0044】
好ましくは、この抗体はTrkCに特異的であり、TrkAまたはB受容体は認識しない。このTrkCに対する抗体の特異性と他のTrkファミリーメンバーとの交差反応性が無いという証拠は、TrkA、B、またはCを発現するHEK 293細胞などの哺乳類組換え細胞の免疫組織化学分析によるか、または免疫ブロット法によって示すことができる。
【0045】
「抗体」とは、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、ならびにキメラ抗体またはヒト化抗体を含む。
【0046】
単離されたニューロトロフィン3タンパク質またはTrkC受容体タンパク質、またはその特定の断片を免疫原として、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体調製のための標準技術を用い、このようなタンパク質と結合する抗体を作製することができる。また、少なくとも一つの抗原決定基を含むこれらのタンパク質の任意の断片を用いてこれらの特異的抗体を作製することもできる。
【0047】
一般に、タンパク質免疫原を用い、好適な対象(例えば、ウサギ、ヤギ、マウス、またはその他の哺乳類)に免疫原を感作させることにより抗体を作製することができる。適当な適当な免疫原調製物には前記タンパク質またはその断片を含むことができ、さらに、フロイントの完全または不完全アジュバントなどのアジュバント、または類似の免疫刺激剤を含んでもよい。
【0048】
よって、本発明に従って用いられる抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体(ニューロトロフィン3タンパク質もしくはそのTrkC受容体と選択的に結合することができる、またはニューロトロフィン3タンパク質もしくはそのTrkC受容体アミノ酸配列のうち少なくともアミノ酸8〜10個の連続するスパンを含んでなるエピトープ含有ポリペプチドと選択的に結合する抗体)のいずれかが含まれる。
【0049】
ニューロトロフィン3タンパク質をコードするmRNAまたはcDNAを検出および定量するために好ましい薬剤は、このmRNAまたはcDNAとハイブリダイズすることができる、標識された核酸プローブまたはプライマーである。この核酸プローブは少なくとも10、15、30、50、または100ヌクレオチドの長さであって、ストリンジェント条件下でそのmRNAまたはcDNAと特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチドであり得る。核酸プライマーは少なくとも10、15、または20ヌクレオチドの長さであって、ストリンジェント条件下でそのmRNAもしくはcDNAまたはその相補的配列と特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチドであり得る。
【0050】
ニューロトロフィン3タンパク質を検出および定量するために好ましい薬剤は、このタンパク質と特異的に結合することができる抗体、好ましくは、検出可能な標識を有する抗体である。抗体はポリクローナルであってもよいし、より好ましくは、モノクローナルである。完全な抗体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab’)2)が使用可能である。プローブまたは抗体に関して「標識された」とは、そのプローブまたは抗体と検出可能な物質をカップリングさせる(すなわち、物理的に結合させる)ことによるプローブまたは抗体の直接的標識、ならびに直接標識された別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識を包含するものとする。間接的標識の例としては、蛍光標識二次抗体を用いる一次抗体の検出、および蛍光標識ストレプトアビジンで検出可能なビオチンによるDNAプローブの末端標識が挙げられる。
【0051】
例えば、候補mRNAの検出のためのインビトロ技術としては、ノーザンハイブリダイゼーションおよびin situハイブリダイゼーションが挙げられる。候補タンパク質の検出のためのインビトロ技術としては、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウエスタンブロット法、免疫沈降法、および免疫蛍光法が挙げられる。候補cDNAを検出するためのインビトロ技術としては、サザンハイブリダイゼーションが挙げられる。
【0052】
本発明がニューロトロフィン3タンパク質のレベルを定量するためのキットを包含する場合、そのキットはこれらのタンパク質を定量可能な標識された化合物または薬剤を含み得る。該薬剤は好適な容器にパッケージングすることができる。このキットはさらに、ニューロトロフィン3タンパク質またはニューロトロフィン3転写物のレベルを定量するためにこのキットを使用することに関する使用説明書を含んでなってもよい。
【0053】
本発明の方法のある実施形態では、ニューロトロフィン3転写物の検出には、アンカーPCRもしくはRACE PCRなどのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、あるいはまた連結連鎖反応(LCR)(例えば、Landegran et al., 1988, Science 241:23-1080、およびNakazawa et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:360-364参照)、あるいはまた定量的リアルタイムRT−PCRにおけるプローブ/プライマーの使用が含まれる。この方法は、患者から細胞のサンプルを採取する工程、そのサンプルの細胞から核酸(例えばmRNA)を単離する工程、場合により、mRNAを対応するcDNAに変換する工程、その核酸サンプルを、ニューロトロフィン3mRNAまたはcDNAのハイブリダイゼーションおよび増幅が起こるような条件下でニューロトロフィン3またはmRNAまたはそれらの対応するcDNAと特異的にハイブリダイズする1以上のプライマーと接触させる工程、および増幅産物の存在を定量する工程を含み得る。当然のことながら、PCRおよび/またはLCRは、検出核酸を定量するために用いられるいずれかの技術と組み合わせて増幅工程として用いるのが望ましい場合がある。
【0054】
本明細書に記載の方法は、例えば、少なくとも一つのプローブ核酸または1セットの本明細書に記載のプライマーもしくは抗体試薬を含んでなるパッケージングされた診断キットを使用することにより実施することができ、これは例えば患者を追跡または診断するために臨床条件下で便宜に使用することができる。
【0055】
最後に、本発明は、転移性癌または進行性癌(好ましくは、この癌はNT3の過剰発現に関連する癌からなる群から選択され、好ましくは、神経芽腫である)を予防または治療することを意図した薬剤を製造するための、ニューロトロフィン3タンパク質をコードする核酸に特異的なアンチセンスまたはiRNA(干渉RNA)オリゴヌクレオチドの使用に関する。
【0056】
干渉RNA(iRNA)は、二本鎖RNA(dsRNA)がその相補的配列を有する遺伝子の発現を特異的に抑制する現象である。以来、iRNAは多くの生物に関して有用な研究ツールとなっている。dsRNAが遺伝子発現を抑制するメカニズムは完全には理解されていないが、実験データは重要な洞察を示している。この技術は哺乳類細胞において遺伝子機能を研究するためのツールとして大きな可能性を持ち、siRNA(低分子干渉RNA)に基づく薬理剤の開発に至る可能性がある。
【0057】
患者に投与する場合、本発明の化合物は、場合により薬学上許容されるビヒクルを含んでもよい組成物の成分として投与するのが好ましい。この組成物は経口または他のいずれの便宜な経路で投与してもよく、別の生物学的に活性な薬剤とともに投与してもよい。投与は全身投与でも局所投与でもよい。例えば、リポソームへのカプセル封入、微粒子、マイクロカプセル、カプセル剤などの様々な送達系が知られ、選択された本発明の化合物またはその薬学上許容される塩を投与するために使用することができる。
【0058】
投与方法としては、限定されるものではないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、大脳内、腟内、経皮、直腸、吸入、または局所投与が挙げられる。投与様式は医師の判断に任される。ほとんどの場合、投与は血流へのまたは直接原発腫瘍への化合物の放出をもたらす。
【0059】
本発明による化合物、または本発明による方法により選択された化合物を含んでなる組成物も本発明の一部をなす。これらの組成物は、患者に適切に投与される形態となるよう、好適な量の薬学上許容されるビヒクルをさらに含むことができる。「薬学上許容される」とは、規制機関が認可していること、または動物、哺乳類、より詳しくはヒトに関する国の、もしくは認知されている薬局方に挙げられていることを意味する。「ビヒクル」とは、本発明の化合物が一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を意味する。このような製薬ビヒクルは、水などの液体、および石油、動物、植物、または合成起源のものを含む油(落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油など)であり得る。製薬ビヒクルは生理食塩水、ゼラチン、デンプンなどであってもよい。さらに、補助剤、安定化剤、増粘剤、滑沢剤、および着色剤を用いてもよい。生理食塩水溶液ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液もまた、特に注射液用の液体ビヒクルとして使用可能である。好適な製薬ビヒクルとしてはまた、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水などの賦形剤が挙げられる。試験化合物組成物は所望により、微量の湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝剤を含んでもよい。本発明の組成物は溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸剤、ペレット、カプセル剤、液体含有カプセル剤、散剤、徐放性処方物、坐剤、エマルション、エアゾール、スプレー、懸濁液の形態または使用に好適な他のいずれかの形態を採ることができる。前記組成物は一般に、経口投与または静脈内投与向けにヒトに適した医薬組成物として常法に従って処方される。該処置に有効な有効化合物の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。さらに、場合によりインビトロまたはインビボアッセイを用いて、最適な用量範囲を特定することができる。厳密な使用量はまた、投与経路および疾病の重篤度によっても異なり、医師の判断と患者の状況に応じて決定されなければならない。しかしながら、経口、鼻腔内、皮内、または静脈内投与の好適な用量範囲は一般に約0.01ミリグラム〜約75ミリグラム/体重kg/日、より好ましくは約0.5ミリグラム〜5ミリグラム/体重kg/日である。
【0060】
本発明を以上の実施形態に関して記載してきたが、以上の記載および以下の実施例は例示であって本発明の範囲を限定するものではないと理解すべきである。本発明の範囲内の他の態様、利点および改変も、本発明が属する技術分野の熟練者には自明であろう。
【実施例】
【0061】
材料および方法
A)細胞培養、トランスフェクション手順、および受容体発現
従前に記載されているように(4)、リポフェクタミンプラス(Invitrogen, Carlsbad, CA)を製造者の説明書に従って用い、ヒト胎児腎臓293Tおよび嗅覚神経芽13.S.24細胞の一時的トランスフェクションを行った。HEK293Tおよび13.S.24細胞をDMEM(Invitrogen)で、13.S.24細胞の場合には0.1%ゲンタマイシンを加えて培養した。組換えヒトNT−3はPreproTech(Rocky Hill, NJ)から購入し、トランスフェクション24時間後に培養培地3に加えた。Santa Cruz Biotechnology (sc-139、 Santa Cruz, CA)から購入した抗C末端抗体を用いたウエスタンブロットにより、トランスフェクション24時間後にTrkC発現を測定した。Trk受容体の原形質膜局在をFACS分析により調べた。要するに、106個の細胞をトランスフェクトし、抗HA抗体(1/100、Sigma, St. Louis, MO)および抗ウサギPE(1/100、Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)で順次標識した。検出はFACSCalibur(BD Biosciences, San Jose, CA)を用いて行った。
【0062】
B)部位特異的突然変異誘導、プラスミドの構築およびsiRNAの設計
PCMX−ラットHA−TrkA、TrkBおよびTrkCプラスミドはS. Meakin (The Robarts Research Institute, London, ON, Canada)から譲渡されたものであった。TrkC HindIII/XbaI断片をpCDNA3ベクター(Invitrogen)へクローニングした。TrkC ICを、以下のプライマー:フォワード5’-CACC ATG AAC AAG TAC GGT CGA CGG TC-3’およびリバース5’-CTG GAC ATT CTT GGC TAG TGG-3’を用いたPCRにより、ディレクショナルpCDNA3.1(Invitrogen)にサブクローニングした。TrkC変異体は、以下のプライマー:D641N:5’-GCG ATG ATC CTT GTG AAT GGA CAG CCA CGC CAG G-3’および5’-CCT GGC GTG GCT GTC CAT TCA CAA GGA TCA TCG C-3’、D495N:5’-ACA CCT TCA TCG CTG AAT GCT GGG CCG GAT AC-3’および5’-GTA TCC GGC CCA GCA TTC AGC GAT GAA GGT GT-3’、D679N:5’-CTT TGT GCA CCG AAA CCT GGC CAC CAGG-3’および5’-CCT GGT GGC CAG GTT TCG GTG CAC AAA G-3’を用い、Quickchange(Qiagen, Valencia, CA)によって得た。Ret IC D707Nもまた従前に記載されている(7)。種々のTrkCドメインを発現する構築物を、以下のプライマー:496−642断片:フォワード5’-CACC ATG GCT GGG CCG GAT ACA GTG G-3’、リバース5’-TCA ATC CAC AAG GAT CAT CGC ATC-3’、496−825断片:フォワード5’-CACC ATG GCT GGG CCG GAT ACA GTG G-3’、リバース5’-CTA GCC AAG AAT GTC CAG GTA G-3’、642−825断片:フォワード5’-GGC CTG GCG TGG CTG TCA ATC CAC AAG GAT CAT C-3’、リバース5’-CTA GCC AAG AAT GTC CAG GTA G-3’を用いたPCRにより、ディレクショナルpcDNA3.1にクローニングした。pCDNA3中のラットTrkCを鋳型として用いた。pLenti−ヒトTrkCはfrom P. Sorensen (University of British Columbia, Vancouver, BC, Canada)およびB. Nelkin (The Johns Hopkins University, Baltimore, MD)から厚意により譲渡されたものであった。ヒトTrkCを、以下のプライマー:フォワード5’-CG CACC ATG GAT GTC TCT CTT TGC CCAG-3’、リバース5’-GCG TCT AGA CTA GCC AAG AAT GTC CAG GTA G-3’を用いたPCRにより、ディレクショナルpCDNA3.1(Invitrogen)にサブクローニングした。pLenti−ヒトTrkCを鋳型として用いた。カスパーゼ−2、−8および−9を発現する構築物のドミナントネガティブ変異体およびBcl2ベクターは従前に記載されている(11、34)。DRGにおけるTrkC発現を低下させるため、3種類のsiRNA二重らせんの混合物(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を用いた。これらの3種類の二重らせんは全て、TrkCの3’UTR領域を標的とし、内因性のTrkCを無効にしたが、注入したプラスミドの産物は無効にしなかった。用いたプライマーは、1S:UCUCAACUCCUUUCUUCCAUUおよび1AS:UGGAAGAAAGGAGUUGAGAUU、2S:CUCAAGUGCCUGCUACACAUAおよび2AS:UGUGUAGCAGGCACUUGAGUA、3S:GCAUUUAUACUCUGUUGCCUCおよび3AS:GGCAACAGAGUAUAAAUGCUCであった。
【0063】
C)細胞死分析
従前に記載されているように(6)、細胞死を、トリパンプルー染色法を用いて分析した。トランスフェクション直後にz−VAD−fmk(TEBU-bio, Le Perray en Yvelines Cedex, France、 20mM)またはBAF[Boc−Asp(Ome)フルオロメチルケトン、Sigma-Aldrich、20mM]カスパーゼ阻害剤を培養培地に加えた。細胞死の程度を、種々のトランスフェクト細胞集団におけるトリパンプルー陽性細胞のパーセンテージとして表す。相対的カスパーゼ活性は、(8)に記載されているように、DEVDAFC切断の蛍光測定により決定した。抗カスパーゼ−3抗体(細胞シグナル伝達)を用いた免疫染色は(4)に記載されている。フローサイトメトリー分析によるカスパーゼ活性の染色は次のようにして行った:7’105個のトランスフェクト細胞を採取し、1mlのPBSで1回洗浄し、FITC−VAD−fmk(5mM、CaspACE, Promega)を含有する200mlの染色溶液に再懸濁させた。37℃で1時間インキュベートした後、細胞を1mlのPBSで洗浄し、フローサイトメトリー分析のために300mlのPBSに再懸濁させた。一本鎖DNAに対するモノクローナル抗体によるアポトーシス細胞の検出は、抗ssDNA/APOSTATN F7−26 抗ssADN抗体(AbCys SA, Paris, France)を用いて行った。30万個のトランスフェクト細胞を採取し、1mlのPBSで1回洗浄し、メタノール中、15〜20℃で1〜3日固定した。次に、固定細胞をペレットとし、250mlのホルムアミドに再懸濁させ、室温で5分間維持した。次に、チューブを75℃に予熱した水浴に10分間浸漬した。これらのチューブにPBS中1%の脱脂粉乳20mlを加え、次にこれらをボルテックスにかけ、室温で15分間維持した。遠心分離の後、細胞ペレットを100mlのモノクローナル抗体(10mg/ml)に再懸濁させ、室温で15分間インキュベートした。次に、細胞ペレットをPBSで洗浄し、100mlのフルオレセインコンジュゲート抗マウスIgMに再懸濁させ、室温で15分間インキュベートした。その後、細胞をPBSで洗浄し、フローサイトメトリー分析のために100mlのPBSに再懸濁させた。フローサイトメトリー分析では、染色された細胞を、FACSCalibur(BD Biosciences)およびCellQuest分析ソフトウエア用い、それぞれ488nmと525〜550nm(FL1フィルター)の励起および発光設定にして数えた。
【0064】
D)インビトロ転写/翻訳およびカスパーゼ切断反応
精製カスパーゼは厚意によりGuy Salvesen (The Burnham Institute, La Jolla, CA)から譲渡されたものであった。インビトロ転写/翻訳およびカスパーゼ−3または−8を伴うインキュベーションは従前に記載(6)されているようにして行った。
【0065】
E)細胞系統およびDRGにおける切断の観察
13.S.24におけるTrkCの切断を観察するため、細胞を採取する2時間前に培養培地にMG132(1mM、Z−Leu−Leu−Leuala、Sigma-Aldrich)を加えた。次に、細胞をWangバッファー(20mM Hepes KOH/10mM KCl/1.5mM MgCl2/1mMナトリウムEDTA/1mMナトリウムEGTA/0.1mM PMSF/1mM DTT/5mg/mlペプスタチン/10mg/mlロイペプチン/2mg/mlアプロチニン)にポッタライズした(potterised)。次に、タンパク質を、抗TrkC抗体(sc−139、Santa Cruz Biotechnology)を用いたウエスタンブロットにより分析した。インビボでTrkC切断を測定するため、E10.5 OF1マウス胚を鋭利なタングステン針で切開して脊髄、原体節およびDRG前駆体を単離し、次にこれらをDMEM F−12(Invitrogen)で部分的に分離した。これらのサンプルをNT−3(PreproTech、10ng/ml)またはBAF(Sigma-Aldrich、20mM)、またはNT−3阻止抗体AF 1404(R&D, Minneapolis, MN、1/100)のいずれかの存在下または非存在下、37℃で振盪しながら一晩インキュベートした。その後、これらのサンプルをそのままLaemmliサンプルバッファーに溶解させ、12%SDS/PAGE上でタンパク質を分離した。フィルターを抗TrkC抗体でプローブした。この実験を3回繰り返したところ、同様の結果であった。
【0066】
F)MAPK/PI3K経路の活性化
細胞を、PI3K阻害剤LY294002(10mM、10分、Sigma-Aldrich)またはMEK阻害剤U0126(10mM、15分、Promega, Madison, WI)の存在下または非存在下、種々の濃度のNT−3(Preprotech、10分)で刺激し、または無刺激とした。細胞を以下のバッファー(50mM Tris pH7.5/1mM EDTA/1mM EGTA/0.5mM Na3VO4/0.1%βメルカプトエタノール/1%Triton(100倍)/50mMフッ化ナトリウム/5mMピロリン酸ナトリウム/10mMβグリセロホスフェート/0.1mM PMSF)に溶解させた。次に、タンパク質を、抗Erk抗体(Cell Signaling, Technology Danvers, MA)、抗ホスホ−Erk抗体(Cell Signaling)、抗Akt抗体(Stressgen, La Jolla, CA)または抗ホスホ−Akt抗体(New England Biolabs, Ipswich, MA)を用いたウエスタンブロットにより分析した。
【0067】
G)感覚ニューロンの分離および培養
後根神経節(DRG)を、本質的に三叉神経ニューロンに関して記載されているように(7)、NMRI染色マウス胚から調製し、1%トリプシン(Worthington, Biochemicals Freehold, NJ)で15分間処理し、機械的に分離した。プレプレーティングにより非ニューロン細胞を除去し、ニューロンを、10ng/mlのヒトNT−3(PeproTech)または30ng/mlの2.5SマウスNGF(Promega)を含むポリオルニチン−ラミニン−コーティングディッシュで増殖させた。NT−3の培養では、細胞を3回も播種した。5日目の培養物をマイクロインジェクションに用いた。NT−3を欠損させるために、これらの培養物をNT−3不含培養培地で3回、穏やかに洗浄した。NGFを除去するために、これらの培養物をNGF不含培地で1回洗浄し、機能遮断抗NGF抗体(Roche, Indianapolis, IN)を加えた。
【0068】
H)マイクロインジェクション
本質的に記載されているように(4)、これらのニューロンのマイクロインジェクションを行った。要するに、発現プラスミド(50ng/ml)をニューロンの核に注入し(1点の実験当たり25〜80ニューロン)、ニューロンを神経栄養因子無しでさらに増殖させた。この手順で生き残った最初のニューロンを4〜6時間後に数えた。72時間後に生きている健康なニューロンを数え、最初のニューロンに対するパーセンテージとして表した。3回の独立した実験の結果を平均値±SEMで表し、一元配置ANOVAおよびpost hoc TuckeyのHSD検定(post hoc Tuckey's honestly significant difference test)により分析した。P<0.05で帰無仮説を棄却した。ニューロンでTrkCを無効にするには、三つのTrkC siRNA二重らせんを終濃度6mMとして合わせた。対照siRNA(sc−37007、Santa Cruz Biochemicals, Santa Cruz, CA)も6mM濃度で注入した。TrkCプラスミドは50ng/ml、GFPプラスミドは5ng/mlとした。注入した培養物をNT−3とともに一晩増殖させた後、NT−3を除去し、72時間後、生きている蛍光ニューロンを数えた。
【0069】
I)細胞実験の手順(特に、例えば7〜10)
a)ヒトNB腫瘍サンプルおよび生物学的注釈
親の同意の後、外科的ヒト神経芽腫腫瘍材料がすぐに冷凍された。材料および注釈は、NB処理に関する国のリファレンス機関、すなわち、Centre Leon Berard (Lyon, France)およびInstitut Gustave Roussy (Villejuif, France)の双方の生物学的遺伝資源センターから入手した。
b)細胞系統、トランスフェクション手順、試薬
ヒト神経芽腫細胞系統はCentre Leon BerardおよびInstitut Gustave Roussyの腫瘍バンドから入手した。CLB−Ge2、CLB−Vo1MoおよびIMR32細胞系統を、10%ウシ胎児血清を含有するRPMI 1640 Glutamax培地(Gibco)で培養した。CLB−Ge2およびIMR32細胞を、リポフェクタミン2000試薬(Invitrogen)を用いてトランスフェクトした。すぐに腫瘍生検および骨髄細胞を分離し、10%ウシ胎児血清を含有するRPMI 1640 Glutamax培地(Gibco)で培養した。嗅覚神経芽細胞13.S.24を培養し、従前に記載されているように(36)トランスフェクトした。抗TrkC阻止抗体(α TrkC)はR&D Systemsから得た(AF 1404)。ヒトTrkCの細胞外ドメインに相当する組換えTrkC/Fcキメラ(Fc−TrkC−EC)はR&D Systemsから得た(373−TC)。BAF[Boc−Asp(Ome)フルオロメチルケトン]カスパーゼ阻害剤(20mM)はSigma-Aldrichから得た。
c)プラスミド構築物、siRNA
TrkCドミナントネガティブ変異体TrkC−IC D641Nおよび切断不能TrkC D495N/D641Nは従前に記載されている(36)。スクランブルsiRNA(sc−37007)およびNT−3 siRNA(sc−42125)はSanta Cruz Biotechnologyから入手した。TrkC siRNAはSigma-Aldrich(SASI_Hs01_00192145およびSASI_Hs01_00192145_AS)から入手した。
d)細胞死アッセイ
2×10個の細胞を血清不足培地で増殖させ、2μg/mlの抗TrkC抗体(R&D Systems AF1404)もしくは2μg/mlのFc−TrkC−EC(R&D Systems 373−TC)で処理する(または無処理)か、あるいはCLB−Ge2細胞ではリポフェクタミン2000(Invitrogen)を、またはIMR32細胞(Invitrogen)ではリポフェクタミンプラスを用い、siRNAまたはTrkC構築物をトランスフェクトした。処置/トランスフェクションの24時間後に、従前に記載されているように(6)トリパンプルー排除によるか、またはToxiLightバイオアッセイキット(Lonza)を用いて細胞死を分析した。従前に記載されているように(6)、Clontech (USA)からのApoAlert CPP32キットを用いてカスパーゼ−3活性を測定することによってアポトーシスを測定した。DNA断片化を検出するため、CLB−Ge2細胞をポリ−Lリシンをコーティングしたスライドで増殖させ、処置/トランスフェクションの24時間後に4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。IMR32でトランスフェクトされた細胞をPFA固定前に細胞遠心した(cytospun)。従前に記載されているように(39)、300U/mLのTUNEL酵素(300U/mL)および6μMのビオチン化dUTP(Roche Diagnostics)を用いてTerminal deoxynucleodityl transferase mediated dUTP-biotin Nick End Labelling (TUNEL)を行った。
e)定量的RT−PCR
神経芽腫サンプルにおけるNT−3およびTrkC発現をアッセイするため、組織学的に定性された腫瘍生検(未熟神経芽細胞>60%)から、Nucleospin RNAIIキット(Macherey-Nagel)を用いて全RNAを抽出し、200ngを、1UのスーパースクリプトII逆転写酵素(Invitrogen)、1UのRNアーゼ阻害剤(Roche Applied Science)および250ngのランダムヘキサマー(Roche Applied Science)を用いて逆転写した。Nucleospin RNAIIキット(Macherey-Nagel)を用いてヒト細胞系統から全RNAを抽出し、1μgを、iScript cDNA合成キット(BioRad)を用いて逆転写した。LightCycler 2.0装置(Roche)にて、Light Cycler FastStart DNA Master SYBERGreen Iキット(Roche)を用い、リアルタイム定量的RT−PCRを行った。定量的RT−PCRは、プライマー:TrkC:フォワード5’-AGCTCAACAGCCAGAACCTC-3’およびリバース5’-AACAGCGTTGTCACCCTCTC-3’、NT−3:フォワード5’-GAAACGCGATGTAAGGAAGC-3’およびリバース5’-CCAGCCCACGAGTTTATTGT-3’を用いて行った。神経芽腫において変動が最小の発現を示す遍在発現ヒトHPRT遺伝子を内部対照として用いた(以下のプライマー:フォワード5’-TGACACTGGCAAAACAATGCA-3’およびリバース5’-GGTCCTTTTCACCAGCAAGCT-3’を使用)。三つのプライマー対全てについて、ポリメラーゼを95℃で10分間活性化した後、95℃で10秒、60℃で10秒および72℃で5秒の35サイクルを行った。
f)免疫組織化学および免疫ブロット
8×10個の細胞をカバーガラス上で細胞遠心し、4%PFAで固定した。次に、これらのスライドを室温で1時間、ヒトNT−3を認識する抗体(1/300、SC−547)とともにインキュベートした。リン酸緩衝生理食塩水ですすいだ後、これらのスライドをAlexa−488−ロバ抗ウサギ抗体(Molecular Probes)とともにインキュベートした。核をHoechst染色(Sigma)で可視化した。
TrkC構築物の発現および内因性TrkC切断を、抗Trk抗体(sc−11、Santa Cruz Biotechnology)を用いたウエスタンブロットにより測定し、従前に記載されているように(36)、抗α−アクチン(13E5、Cell Signaling)をローディング対照として用いた。2μg/mlの抗TrkC抗体(R&D Systems AF1404)、20nMのLy29402(Sigma)、100 nMのU0126(Sigma)または100ng/mlのNT3(Abcys)を含む血清不含培地で16時間培養した後、CLB−Ge2細胞のホスホ−Aktおよびホスホ−Erkレベルを、抗ホスホ−Akt(4058、Cell Signaling)およびホスホ−Erk1&Erk2(E7028、Sigma)を用いたウエスタンブロットにより測定した。
g)NB進行および転移のニワトリモデル
40μLの完全培地に懸濁させた10個の神経芽腫細胞を10日目(day 10)のひな鳥漿尿膜(CAM)に播種した。11日目および14日目に、2μgの抗TrkC抗体または無関連のイソ型抗体(Santa Cruz Biotechnology sc−1290)を腫瘍に注入した。siRNA処理としては、11日目および14日目に、3μgのスクランブルTrkCまたはNT−3 siRNAを漿尿膜管に注入した。17日目に、腫瘍を摘出し、面積を、Axio Vision Release 4.6ソフトウエアを用いて測定した。原発腫瘍に対するアポトーシスを測定するため、それらを4%PFAで固定した後、30%スクロースで一晩処理することによって低温保護し、Cryomount(Histolab)に包埋した。腫瘍のクリオスタット切片(Roche Diagnostics)に対してTUNEL染色を行い、核をHoechstで染色した。転移性を評価するため、腫瘍担持胚から肺を採取し、NucleoSpin Tissueキット(Macherey Nagel)を用い、ゲノムDNAを抽出した。転移性は、以下のプライマー:フォワード5’−ACGCCTGTAATCCCAGCACTT−3’およびリバース5’−TCGCCCAGGCTGGAGTGCA−3’を用いたヒトAlu配列のRT−Q−PCR検出によって定量した。ひな鳥グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)特異的プライマー:フォワード5’−GAGGAAAGGTCGCCTGGTGGATCG−3’、リバース5’−GGTGAGGACAAGCAGTGAGGAACG−3’を対照として用いた。両プライマー対とも、95℃で2分間のポリメラーゼ活性化、次いで、95℃で30秒、63℃で30秒および72℃で30秒の30サイクルにより、転移性浸潤を評価した。接種を行わなかったひな鳥胚の肺から抽出したゲノムDNAを用いて閾値を求めた。
【0070】
実施例1:TrkCは依存性受容体である
本発明者らは、まず、HEK293T細胞(HEKは、「ヒト胎児腎臓」を表す)または不死化嗅覚神経芽細胞13.S.24細胞で全長ラットTrkCを一時的に発現させた。TrkC発現は、これらの細胞がTrkCコード構築物[参考資料(SI) 図5ならびに図1Aおよび1F]でトランスフェクトされた場合にのみ検出された。図1Aに示されるように、細胞死誘導はTrkCの発現と関連があった。TrkC発現が(i)カスパーゼ活性の上昇[細胞溶解液でのDEVD−AFC切断の測定(図1B)、抗活性カスパーゼ−3抗体で染色された細胞の定量(図1C)、または生細胞におけるFITC−VAD−fmkカスパーゼ基質の切断の測定(図1D)により決定される]および(ii)DNA縮合の増加[抗一本鎖DNA抗体で染色された細胞のパーセンテージ(SI 図5B)により測定]を誘導したことから、TrkCにより誘導される細胞死はアポトーシスと定義された。このアポトーシスは、一般的なカスパーゼ阻害剤zVAD−fmkまたはboc−アスパルチル(OMe)−フルオロメチルケトン(BAF)を加えた際に、TrkCにより誘導されるアポトーシスを完全に阻害することから、カスパーゼ依存性である(図1B、データは示されていない)。興味深いことに、このような細胞死促進効果は、TrkCの代わりにTrkAまたはTrkBが発現される場合には、TrkA、TrkBおよびTrkCが同等のレベルで細胞膜に与えられる場合であっても(SI 図5A、データは示されていない)、見られない(図1D)。アポトーシスの誘導がTrkCの異常な自己活性化により引き起こされる可能性を排除するために、TrkC野生型の代わりにキナーゼデッド変異体であるTrkC D679Nを発現させた。NT−3に応答してErkまたはAktのリン酸化を誘導することができない(図4C参照)この変異体は、TrkC野生型と同等のアポトーシス誘導活性を示す(図1D)。よって、TrkC発現は、TrkCキナーゼ活性により引き起こされるものではないアポトーシス細胞死を誘発する。
本発明者らは、次に、NT−3の存在がTrkCによるアポトーシス誘導活性に影響を及ぼすか否かを評価した。TrkCにより媒介される細胞死[トリパンプルー排除アッセイ(図1E)、カスパーゼ活性(図1F)またはDNA縮合(SI 図5C)により測定]は、従来TrkCの下流で正のシグナル伝達を誘発したNT−3濃度の範囲内で用いたNT−3により、用量依存的に阻害された[すなわち、AktまたはErkのリン酸化により測定(図1E)]。ゆえに、NT−3はTrkCにより媒介されるアポトーシスを遮断する。さらに、この依存作用はラットTrkCに限定されず、ヒトTrkCもまた、NT−3が存在しなければ細胞死を誘発する(図1G)。これらのデータを考え合わせると、TrkCが依存性受容体として働くことが示される。
【0071】
実施例2:TrkC細胞内ドメインはカスパーゼにより切断される
TrkCにより誘導される細胞死の分子機構を解明するために、本発明者らはさらにカスパーゼの関与を分析した。依存性受容体DCC、UNC5H、Patched、およびRETは細胞死の誘導に事前のカスパーゼ切断を必要とすることが示されている(4、6〜8)。従って、本発明者らは、TrkCの細胞内ドメインがカスパーゼにより切断可能か否かを分析した。TrkCの細胞内領域は少なくとも372個のC末端アミノ酸を包含する。このドメインをインビトロで翻訳し、その産物を精製活性カスパーゼ−3またはカスパーゼ−8とともにインキュベートした。図2Aは、TrkCの細胞内ドメインはインビトロでカスパーゼ−3によって切断されるが、カスパーゼ−8によっては切断されないことを示す。同じ実験条件で、TrkAおよびTrkB細胞内ドメインは、カスパーゼ−3によって有意に切断できなかった(図2A)。ゆえに、TrkCはインビトロでカスパーゼ、特に、カスパーゼ−3様カスパーゼによって切断される。活性カスパーゼ−3とともにインキュベートすると、見掛けの相対分子量19、15および6kDaで移動する切断産物が検出されるが、このことは少なくとも二つの切断部位の存在を示唆する。これらのカスパーゼ切断部位を、好ましいP4およびP1’位(9)とカスパーゼ切断断片の見掛けの相対サイズに基づく変異体を構築することによりマッピングした。一方、TrkCの細胞内ドメイン内の種々のアスパラギン酸(Asp)残基の突然変異はカスパーゼ−3切断に影響はなく、Asp−641のAsnへの突然変異は、19および15kDa断片の出現を完全に抑制した(図2B)。次に、もう一つのカスパーゼ部位は、二重変異体D641NおよびD495Nが完全にカスパーゼ−3切断耐性であったことから、Asp−495に位置決定された(図2B)。よって、TrkCは、Asp−495およびAsp−641に位置する二つの部位でカスパーゼにより切断される。興味深いことに、これらのアスパラギン酸残基はひな鳥、ラット、マウスおよびヒトTrkCで保存されていることが明らかであるが、TrkAまたはTrkBに対応する位置が見つからなかった。TrkCのC末端エピトープに対して作製された抗体を用い、TrkCを発現する13.S.24細胞に対して免疫ブロットを行ったところ、細胞を一般的なカスパーゼ阻害剤zVAD−fmk(図2C)およびBAF(SI 図6A)で処理した場合には検出できなかった二つのバンド(それぞれ35および20kDa前後)が明らかになった。ヒトTrkCを13.S.24細胞で発現させた場合にもこれらの同じ二つのバンドが見られた(SI 図6C)。さらに、D495Nの突然変異は35kDa断片の出現を阻害し(D641Nの突然変異は20kDaバンドの非存在と関連している)、13.S.24細胞で発現された二重変異体はこれら二つの断片のいずれを示すこともできない(図2C)。よって、これら二つのバンドは、Asp−495およびAsp−641においてTrkCの内因的カスパーゼ切断から生じる二つのTrkC断片に相当する。興味深いことに、この二つの部位におけるカスパーゼ切断はTrk共受容体p75ntrの過剰発現によっては影響を受けない(SI 図6D)。TrkC切断カスパーゼの性質はまだ分かっていない。実際、インビトロでカスパーゼ−3がTrkCを切断するならば、おそらく細胞でTrkCを切断するのはカスパーゼ−3だけではなく、カスパーゼ−3阻害剤DEVD−fmkおよびカスパーゼ−3のドミナントネガティブ変異体の使用はどちらも、13.S.24細胞におけるTrkCのカスパーゼ依存性切断を遮断することができない(SI 図6Aおよび6B)。カスパーゼによるTrkCの切断が自然に生じるか否かを測定するために、胚性マウス後根神経節(DRG)を部分的に分離し、10ng/ml NT−3の存在下、またはカスパーゼ阻害剤BAFを伴ってもしくは伴わずにTrkC阻止抗体の存在下で一晩維持した。通常の培養条件では20kDaのバンドが検出されたが、このTrkC断片はNT−3またはBAFを伴った場合に消失したのに対し、阻止抗体が存在すると増強された(図2D)。これらのデータを考え合わせると、細胞不含条件、トランスフェクト細胞およびDRGにおいて、TrkCはカスパーゼによって切断されることが裏付けられる。
【0072】
実施例3:TrkCのカスパーゼ切断によりTrkCアポトーシス誘導ドメインが放出される
カスパーゼによるTrkCタンパク質の切断の機能的重要性を評価するために、本発明者らは、13.S.24細胞またはHEK293T細胞で全長TrkC D641N変異体、TrkC D495N変異体またはTrkC D641N/D495N二重変異体を発現させ、トリパンプルー排除アッセイおよびカスパーゼ活性またはDNA縮合の測定により細胞死を評価した(図3A〜3D)。著しくは、カスパーゼ部位の突然変異は1箇所だけでも2箇所でも、TrkCの発現レベルおよび血漿膜への局在に影響を及ぼさないが(図3A、データは示されていない)、TrkCによるアポトーシス誘導活性を阻害するには十分であった(図3B〜3D)。これらの結果を考え合わせると、TrkCのカスパーゼ切断はTrkCによるアポトーシス誘導活性の前提条件であることが示唆される。本発明者らは、次に、この切断がアポトーシス誘導ドメイン(すなわち、依存性ドメイン)の放出または露出を可能とするか否かを調べた。TrkCによるアポトーシス誘導活性を排除するにはAsp−495の後に位置する領域の欠失で十分であった(データは示されていない)。本発明者らは、次に、13.S.24細胞で完全な細胞内ドメイン、第二のカスパーゼ切断部位Asp−641の後に位置する領域、または二つのカスパーゼ切断部位の間に含まれる断片を発現させた。図3Fおよび3Gに示されるように、Asp−495とAsp−641の間に位置する断片の発現(図3E)はアポトーシスを誘発するのに十分であったが、642−825断片はアポトーシス誘導活性を示すことができなかった。興味深いことに、TrkC細胞内ドメインの発現はアポトーシスを誘導できず、全長TrkCはアポトーシス誘導したが、このことはカスパーゼ切断とその後の細胞死誘導がトランスメンブランTrkCを必要とすることを示唆している(図3Fおよび3G)。さらに、2箇所のカスパーゼ切断から生じる断片(すなわちTrkC 496−641)が細胞を死に至らせるのに対し、Asp−495における1箇所のカスパーゼ切断から生じる断片(例えば、TrkC 496−825)は細胞を死に至らせないという事実は、TrkCによるアポトーシス誘導活性を排除するには1箇所のカスパーゼ切断部位の突然変異だけで十分であるという知見と合わせると、TrkCにより誘導されるアポトーシスには両方でのカスパーゼ切断が必要であるという論点を裏付ける(図3F)。
【0073】
この断片がさらなる生物学的状況下でアポトーシスを誘導するか否かを測定するために、本発明者らは、このTrkCの依存性ドメイン(TrkC 496−641)の発現が一次ニューロンを発現するTrkCにおいてアポトーシスを誘導するか否かを分析した。本発明者らは、NT−3とともに5日間培養維持した胚性マウスDRGニューロン、そして対照としてNT−3欠損したものを分析した(図4も参照)。図3Hに示されるように、マイクロインジェクションによるこのドメインの発現はNT−3で維持したDRGニューロンでアポトーシスを誘導し、ゆえに、NT−3が与える生存シグナル伝達を上回る。NT−3がDRGにおいてカスパーゼ依存性のTrkC切断を阻害する(図2D)ということと考え合わせると、この知見は、非結合型のTrkCがカスパーゼにより切断され、その結果、TrkCによるアポトーシス誘導性断片が放出されるという考察を裏付ける。放出された断片がどのようにアポトーシスを誘導するかはまだ分かっていない。しかしながら、興味深いことに、この断片の細胞死誘導は、別の依存性受容体であるDCCによる細胞死誘導(6)と似ていることに着目される。実際、TNFまたはFasにより誘導される細胞死を遮断することが知られているカスパーゼ−8のドミナントネガティブ変異体が発現しても、TrkC−496−641により誘導される細胞死を阻害することができなかった(図3I)ので、TrkC依存性ドメインにより誘導される13.S.24細胞の細胞死は細胞死受容体経路に依存していないことが明らかである。同様に、TrkC依存性ドメインにより誘導される細胞死は、別のイニシエーターカスパーゼ、カスパーゼ−2のドミナントネガティブ変異体によっては阻害されなかった(図3I)。これに対し、カスパーゼ−9ドミナントネガティブ変異体は、TrkC依存性ドメインにより誘導される細胞死を完全に阻害した(図3I)。カスパーゼ−9が必要であるということは、むしろミトコンドリアアポトーシス経路の関与を示唆した。さらに、Bcl2が過剰発現した際に13.S.24細胞の細胞死の阻害は見られなかった(図3I)ことから、この放出ドメインはミトコンドリア依存性経路によっては死に至らないことが示唆される。この知見は、Bcl−XL過剰発現がNT−3の離脱と関連した培養DRGニューロンの死滅を遮断することができなかったという知見と一致している(L.-Y.Y. and U.A.,未発表データ)。しかしながら、この知見は、固有受容ニューロンの生存を示すNT−3/Bax二重ノックアウトマウスの表現型によっては裏付けられず、インビボではニューロン死の調節がもっと複雑であることが示唆される(10)。TrkC依存性ドメインが細胞を死に至らせるのに用いているメカニズムに関する、インビボおよびインビトロでのより詳細な研究がまだ行われていないとしても、TrkCにより誘導される細胞死が、(i)カスパーゼによるDCC切断、(ii)アポトーシス誘導依存性ドメインの放出/露出、および(iii)このドメインとカスパーゼ−9との相互作用とカスパーゼ−9の活性化を必要とするDCCにより誘導される細胞死(11)と関連があるということは興味深い。しかしながら、TrkCの依存性ドメインがカスパーゼ−9を動員し、そのようなカスパーゼ活性化複合体を介してアポトーシスを活性化するか否かはまだ分かっていない。
【0074】
実施例5:TrkCの依存性受容体活性は感覚ニューロンの死滅の前提条件である
次に、本発明者らは、ここで記載するTrkCアポトーシス誘導活性がNT−3離脱の後の一次ニューロンの死滅に何らかの関連を持つか否かを検討した。依存性受容体Patched(Ptc)でも見られたように、本発明者らはまず、変異型のTrkC[すなわち、カスパーゼ部位D641に突然変異を有するTrkCの細胞内ドメイン(TrkC IC D641N)]の発現が、全長TrkCにより誘導される細胞死を完全に阻害することに気づいた(図4Aおよび4B)。TrkC IC D641Nの発現はPtcまたはBaxにより誘導されるアポトーシスには影響を及ぼさなかった(データは示されていない)ことから、このドミナントネガティブ効果は特異的なものであった。よって、TrkC IC D641Nは、TrkCによるアポトーシス誘導活性に特異的なドミナントネガティブ変異体として働く。D641N突然変異は理論上、完全な受容体から細胞内領域が分離した際にTrkCキナーゼドメインの異所活性化をもたらし、その結果として増強された生存シグナル伝達がアポトーシスを回避する可能性もある。この可能性を排除するために、本発明者らはTrkCをトランスフェクトした13.S.24細胞においてNT−3処理に応答したErkおよびAktのリン酸化を分析した。図4Cに示されるように、TrkC IC D641Nドミナントネガティブ変異体が存在すると、NT−3の非存在下でもErk/Aktの活性化を誘導しないし、NT−3依存性TrkCにより媒介されるErk/Aktの活性化に干渉もしない。よって、TrkC IC D641Nは、生存シグナル伝達の増強によって細胞死を回避するのではなく、代わりに、リガンドが離脱したTrkCにより活性化された細胞死シグナル伝達との干渉によって細胞死を回避する。
【0075】
内因性のTrkCに対するTrkC IC D641Nの抗アポトーシス効果を確認するために、本発明者らは胚性マウスからDRGを分離し、NT−3の存在下で5日間、感覚ニューロンを培養した。対照ニューロンは、TrkAを活性化するNGFを用いて維持した。NGFまたはNT−3いずれかの離脱は、72時間後に数えると、約60〜70%のニューロンに死滅をもたらす。本発明者らは、NT−3またはNGFで維持したニューロンをTrkC IC D641Nまたはmockベクターのいずれかでマイクロインジェクションし、NT−3またはNGFを除去した。図4Dに示されるように、ドミナントネガティブ変異体はNT−3が欠損したニューロンの生存を劇的に高めたが、NGFが欠損したニューロンの死滅には影響を及ぼさなかった。興味深いことに、D641Nに突然変異のないTrkCの細胞内ドメインをコードする構築物をマイクロインジェクションしても、NT−3が欠損したニューロンの生存に影響を及ぼさなかった(図4E)。よって、NT−3が欠損したニューロンに対するTrkC IC D641Nの抗アポトーシス作用は異所性TrkC細胞内ドメインの過剰発現によるものではなく、強制的なTrkCキナーゼ触媒活性を有する可能性がある。チロシンキナーゼドメインの役割を特異的に排除するために、本発明者らは、さらなるキナーゼ不活性化突然変異D679N(この突然変異は、NT−3に応答してErkまたはAktを活性化するTrkCの能力を無効にする、図4C参照)を持つTrkC IC D641Nをマイクロインジェクションした。図4Eに示されるように、このキナーゼ不活性化突然変異は、NT−3が欠損したニューロンにおけるTrkC IC D641Nの細胞死抑制活性を無効にし、このことは、ここにはチロシンキナーゼ触媒活性は関与しないことを示す。さらに、別の依存性受容体であるRetのドミナントネガティブ変異体(Ret IC D707N)を、NT−3が欠損した(またNGFが欠損した)ニューロンにマイクロインジェクションしても細胞死を阻害できなかった(図4E)ことから、NT−3が欠損したニューロンに対するTrkC IC D641Nの抗アポトーシス作用は受容体特異的である。NT−3欠如時に見られた細胞死が非結合型のTrkCの内因的アポトーシス誘導活性に関連しているか否かをさらに検討するために、本発明者らは、siRNAのマイクロインジェクションにより内因性のTrkCを阻害し、異所性の野生型TrkCまたは2箇所のカスパーゼ部位TrkC D495N/D641Nが突然変異したTrkCを発現させるという置換試験を行った。対照実験として、対照siRNAをマイクロインジェクションしても、NT−3欠如時の一次ニューロンの死滅に有意な影響は無かった(データは示されていない)。さらに、図4Fに示されるように、対照の状況と同様に、内因性のTrkCを異所性のTrkCで置き換えることは、NT−3の欠如に応答した一次ニューロンの死滅に関連している。他方、内因性のTrkCをTrkCカスパーゼ傷害変異体で置換すると、NT−3離脱時の細胞死誘導が阻害された(図4F)。さらに、野生型TrkCとTrkC D495N/D641NはNT−3は非存在下または存在下で同様のAkt/Erkリン酸化パターンを示す(図4G)ことから、この作用は、TrkC陽性シグナル伝達を有するカスパーゼ部位の突然変異の干渉によるものではない。これらのデータを考え合わせると、NT−3欠如時に見られる細胞死は生存シグナルの欠如のためだけでなく、非結合型のTrkCにより誘発される能動的な細胞死刺激のためでもあることが証明される。
【0076】
考察
インビボにおいて、種々の発達段階で、多くのニューロンが生理学的に死に至り、このプロセスではニューロトロフィンとそれらの受容体が重要な役割を果たす。発達中の感覚神経節では、NT−3依存性ニューロンが過剰産生される。余分なニューロンは、プログラムされた細胞死の間にNT−3欠乏により除去される。この線に沿って、マウスにおけるNT−3の過剰発現はDRGにおけるニューロンの数を増加させる(12〜14)。従来の考察では、これらのニューロンの死滅は、ニューロトロフィン受容体のキナーゼ活性化の欠如に起因する生存シグナル(すなわち、MAPKおよび/またはPI3K経路)の欠如によると提案されている。しかし、本発明者らの研究から、余分な、TrkCを発現するNT−3感受性ニューロンは、これらの生存シグナルの欠如のためだけでなく、本明細書に記載する非結合型のTrkCにより誘発されるアポトーシス誘導経路によっても死滅すると推測したくなる。この仮説に合う一つの興味深いヒントが、ニューロトロフィンおよびそれらの個々の受容体に対する種々のノックアウトマウスから得られたデータによって与えられる。実際、マウスにおけるTrkAまたはNGFの不活性化は、出生時に同じ量の感覚ニューロン(すなわち、侵害受容ニューロン)の欠如をもたらす(15)。同様に、TrkBまたはBDNFのいずれかの不活性化は、同等の機械受容ニューロンの欠如をもたらす(16、17)。他方、TrkCが無効となった新生児はDRGニューロンの30%の欠如を示し、NT−3−/−新生児は70%の欠如を示す(18、19)。ニューロトロフィンがキナーゼ依存性のシグナル伝達によって正の方向にのみ働くという従来の考察に合う説明を探すことで論争が持ち上がり、現在、二つの仮説が提案されている。Farinasら(20、21)は、NT−3−/−マウスにおけるDRGニューロンの損失の増大が、NT−3のTrkAおよびTrkBを介したシグナル伝達能により説明されることを示唆している(20〜22)。あるいは、Ernforsら(17)は、この作用が、種々の部分集団が確立される前の神経節形成の初期に、大多数がTrkCを発現するニューロン前駆体の死滅によるものであることを提案している(24)。さらに、TrkCとNT−3不活性化の間のこの矛盾に関する別の有力な説明は、TrkCの独立受容体の側面に関連しているのかもしれない。実際、依存性受容体の共通の特徴として、依存性受容体のリガンドの不活性化は受容体の不活性化よりも、より著しい表現型と関連しているはずとの仮説が立てられている。この矛盾は依存性受容体neogeninに関してさらに示されている(25)。TrkCの場合、TrkC変異型マウスで見られるニューロン死はTrkCの正の/キナーゼシグナル伝達の欠如の結果である可能性があり、NT−3変異体で見られるニューロン死は正の経路の欠如とTrkCの構成的アポトーシス誘導活性の双方の結果であると考えられる。もし二重NT−3/TrkC変異型マウスがNT−3変異型マウスよりも重篤度の低い表現型を示せば、このような考察はそれ自体証明されるであろう。この可能性はさらに検討する必要がある。
【0077】
生存シグナルの欠如および非結合型のTrkCにより誘発される能動的なアポトーシス誘導シグナルの相対的重要性を理解するにはさらなるインビボデータが必要であるのは明らかとしても、この研究は、神経栄養因子の欠如が生存シグナルの欠如に等しく、「不履行による死滅」をもたらすと仮定する神経栄養説にゆがみをもたらす。ゆえに、本発明者らは、単に生存シグナルの欠如だけでは生理学的なニューロン死を説明するのに十分でないことを提案する。神経栄養の支えが不十分な場合に「内在的なアポトーシス状態」を作り出すには、能動的なアポトーシス誘導活性もまた必要である。場合によっては、この能動的なアポトーシス誘導シグナルは、プロセシングを受けていないプロNGFによるp75ntrの刺激(26、27)、またはFasリガンドのFas受容体への結合(28)などの依存性受容体に依存しないメカニズムによって提供される。しかしながら、いくつかの場合では、本明細書でNT−3依存性感覚ニューロンにおいて示したように、このようなアポトーシス誘導活性は非結合型の依存性受容体TrkCにより媒介される可能性がある。
【0078】
しかしながら、アポトーシス誘導性となるのにカスパーゼ切断を必要とするTrkCは、それ自体でアポトーシスを誘発するには不十分であり、むしろ、一次アポトーシス刺激の下流で増幅因子として働くということが立証できる。実際、どのようにして受容体がアポトーシスを誘発するとともに、それがアポトーシス誘導分子を作り出すために、アポトーシスのエフェクターであると考えられているカスパーゼによる切断を必要とするのだろう。一つの可能性は、このプロセスがカスパーゼでないプロテアーゼにより誘発された後、カスパーゼ切断により増大するということである。これらの受容体を介してカスパーゼ増幅ループを作り出すに十分なカスパーゼを局部的に活性化することによって細胞死経路を誘発するには、カスパーゼでないプロテアーゼによる数回の切断事象だけで十分であろう。あるいは、カスパーゼが非アポトーシス細胞では完全に不活性であり、アポトーシス誘導刺激時にのみ多大に活性化されることを示唆するこの新旧のドグマは誤っているかもしれない。最近の発見によれば、カスパーゼチモーゲンは若干のプロテアーゼ活性を示す(29)が、細胞は活性カスパーゼの増幅を妨げる、IAPタンパク質などの内因性カスパーゼ阻害剤を発現することが示されている。同様に、細胞死誘導のない局部的なカスパーゼの活性化も現在記載されている(30、31)。よって、細胞死誘導はカスパーゼ誘発よりもむしろカスパーゼ増幅によって起こる可能性があり、このことは細胞運命の決定におけるカスパーゼ活性化/阻害の細胞制御の重要性の裏付けとなり、すなわち、細胞死誘導は低い/局部的なカスパーゼ活性化(すなわち、細胞分化のような細胞に対する「正の」インプットを有し得る)(30)から高い/分布したカスパーゼ活性化へと移行する結果であると考えられる。従って、低い/局部的なカスパーゼ活性化と高い/分布したカスパーゼ活性化の間のバランスは、IAPなどの内因性カスパーゼ阻害剤により、また、依存性受容体TrkCなどの内因性のカスパーゼ増幅因子によって調節される可能性がある。
【0079】
興味深いことに、TrkAおよびTrkBにより余儀なくされる発現は、HEK293T細胞または13.S.24細胞のアポトーシス死を誘導することができなかった。さらに、TrkAおよびTrkBはインビトロでカスパーゼにより切断されない。よって、TrkCは原型の依存性受容体であるが、TrkAおよびTrkBはそうではなく、TrkA、TrkB、およびTrkCのように近縁の受容体であっても、細胞生存/細胞死に関して全く異なる活性を獲得し得ることを示唆する。リガンドが結合した際に生存を誘導するだけの、TrkAおよびTrkBのような一面(mono-sided)受容体の他、TrkCのような両面(two-sided)受容体は生存と死の両方を制御する。両面のTrkC/NT−3対は神経系の発達中に重要な役割を果たすと推測したくなる。NT−3の結合時にTrkCにより活性化される正のシグナル伝達経路は細胞分化、増殖または生存に重要であるのに対し、NT−3の非存在下でTrkCにより誘発される負のシグナル伝達経路は胚発生および成体組織のホメオスタシスで正常なアポトーシスによる細胞の除去の一部であり得る。
【0080】
TrkCはまた腫瘍形成、特に髄芽細胞腫の形成にも関与している。特に、小児髄芽細胞腫によるTrkCの高い発現は有利な臨床転帰と関連があり、この効果はTrkCのアポトーシス誘発能と関連している可能性があると提案されている。実際、TrkCの過剰発現はヌードマウスにおける髄芽細胞腫細胞系統の大脳内異種移植片の成長を阻害し、個々の腫瘍細胞によるTrkC発現は一次髄芽細胞腫生検検体内のアポトーシスと高い相関がある(32、33)。これまで、この意味はそのリガンドNT−3により活性化される受容体に関する従来の図式の下で考えられてきたとしても、髄芽細胞腫発生におけるTrkCの依存性受容体側の重要性を考えることには価値がある。さらに、TrkCチロシンキナーゼ受容体を用いて本明細書で示されたデータ(おそらく他のいくつかのチロシンキナーゼ受容体にも適用できる)もまた、受容体のキナーゼ活性との干渉による生存経路の阻害に基づく一般的な抗癌戦略についての問題を浮上させる。本発明者らのデータによれば、キナーゼ活性の阻害は腫瘍細胞の死滅を効率的に誘発するには十分でないと思われる。よって、キナーゼ阻害とこれらのチロシンキナーゼ依存性受容体のアポトーシス誘導活性の刺激の両方に基づく同時処置が、これまでに見られている腫瘍耐性のいくつかを迂回し得る、より魅力があって効率的な治療戦略として浮かび上がる。
【0081】
実施例6:NT−3/TrkC相互作用の阻害は神経芽腫細胞のアポトーシスを誘発し、原発腫瘍の成長および転移の阻害に関連する
実施例1〜5において、本発明者らは、ニューロトロフィン受容体TrkCが依存性受容体であり、それ自体、そのリガンドであるニューロトロフィン−3(NT−3)の非存在下でアポトーシス死を誘導することを示した。この活性はカスパーゼにより媒介される、TrkCの細胞内ドメインの切断によるものであり、これによってアポトーシス誘導断片の放出が可能となる。依存性受容体は、リガンドの利用能の範囲を超えて、増殖または移動する腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することにより腫瘍サプレッサーとして働くと提案されている。そして、腫瘍細胞の選択的優位性は、受容体発現を消失させること(この線で、TrkC発現は神経芽腫(NB)の良好な予後と関連づけられている)またはリガンドの過剰発現を獲得することのいずれかである。本発明者らはここで、いくつかのNBにおいてNT−3がアップレギュレーションされ得るか否かと、NT−3のこの自己分泌産生が腫瘍阻害を誘発するツールとして使用可能か否かを検討した。
【0082】
1)方法
本発明者らは、26のヒト神経芽腫生検のTrkCおよびNT−3発現をQ−RT−PCRにより測定し、進行性および転移性の高いNB(病期4)が最も高いN比(T3/TrkC)を示すことを見出した(図10)。本発明者らは、Q−RT−PCRに基づき、NT−3レベルの高い二つの細胞系統(CLB−Vo1とCLB−Ge1)および対照として、一つのNT−3陰性細胞系統(IMR32細胞)を選択し(図11の左のパネル)、このタンパク質レベルをNT−3免疫細胞化学により確認した(図11の右のパネル)。本発明者らは、これらの細胞を、TrkC−NT3結合に拮抗するNT−3抗体(AF1404)の存在下でインキュベートし、細胞死誘導をトリパンブルー排除およびカスパーゼ3活性化により測定した。本発明者らはまた、原発腫瘍の成長と転移を評価するために、ニワトリ胚における神経芽腫発生モデルを設定した。このモデルでは、本発明者らは腫瘍をTrkC阻止抗体で処理した。このようにして、本発明者らは、そのリガンドともはら相互作用できない場合に、神経芽腫の制御機構としてのTrkCアポトーシス誘導活性を分析した。
【0083】
2)結果
TrkCは、TrkC阻止抗体の存在下でインキュベートした際のNT−3発現神経芽腫細胞系統においてアポトーシスを誘導するが、NT−3陰性細胞に対する効果は持たない。同様の結果が病期4のNBを持つ患者から直接培養したNBでも得られた。また、予備的な結果が、抗体処置した際に原発腫瘍発生の軽減およびインビボにおける転移の阻害を示したが、対照抗体による処置では効果は見られなかった。
【0084】
実施例7:進行性神経芽腫の大部分でNT−3が発現する
本発明者らは、NT−3およびその受容体TrkCの発現レベルの比較において特別な関心を持って病期4のNBの着目した。本発明者らは、まず、106の病期4 NB腫瘍のパネルにおいてNT−3およびTrkCの発現をQ−RT−PCRにより分析した。NT−3は相当な割合の病期4のNBでアップレギュレートされている(図16Aおよび図l7)。38%の腫瘍が、NT−3発現に中央値に比べて少なくとも2倍の増加を示し、20%を超えるものが5倍の増加を示した(図16Aの上のグラフ)。NT−3レベルの高い腫瘍は高い比(NT−3/TrkC)を示し、腫瘍におけるNT−3の獲得という見方を裏付けている(図16Aの下のグラフ)。NT−3レベルを予後および病期4 NBの異なるサブカテゴリー、すなわち、病期4S(1歳未満またはそれ以降に診断された病期4)と比較しても有意な差は見られず、NT−3のアップレギュレーションは病期4のNBの大部分において腫瘍の進行性と転移性とは独立に起こる選択的獲得であることが示唆される。同様の結果が、病期1、2または3のNBでも得られた(図17)。NT−3の発現はmRNAレベルで検出されただけでなく、タンパク質レベルでも免疫組織化学により検出された(図16B)。NT−3の過剰発現は病期4のNBの38%に見られたが、主として病期4のNB腫瘍材料に由来するNB細胞系統の一部にも見られた(図16C)。三つのヒトNB細胞系統、すなわち、CLB−Ge2、CLB−Vo1MoおよびIMR32をさらに研究した。メッセンジャーレベル(図16C)およびタンパク質レベル(図16D)の双方において、三つの細胞系統は総てTrkCを発現するが(データは示されていない)、CLB−Ge2と、CLB−Vo1Moとは高レベルのNT−3を発現するのに対し、IMR32細胞ではNT−3がかろうじて検出された。興味深いことに、細胞の透過処理をせずにCLB−Ge2細胞でNT−3免疫染色を行ったところ、明らかな膜染色が示され、進行性のNBで見られた高いNT−3含量がNB細胞におけるNT−3の自己分泌発現と関連していることを示唆する。
【0085】
実施例8:神経芽腫におけるNT−3の発現は生存選択的に優位である
依存性受容体のパラダイムから予測されるように、CLB−Ge2およびCLB−Vo1Mo細胞で見られるNT−3の自己分泌発現が腫瘍細胞の生存に選択的優位性を与えるか否かを検討するために、この自己分泌ループの破壊に応答した細胞死を分析した。第一のアプローチとして、NT−3をRNA干渉によりダウンレギュレーションした。CLB−Ge2細胞のNT−3 siRNAトランスフェクションは、免疫組織化学により見られるように、NT−3タンパク質の有意な現象に関連していた(図18A)。カスパーゼ活性アッセイ(図18B)またはToxilightアッセイ(図18C)により測定した際、スクランブルしたsiRNAはIMR32およびCLB−Ge2細胞の製造に影響を及ぼさなかったが、NT−3 siRNAトランスフェクションはCLB−Ge2細胞死と関連していた(図18Bおよび18C)。これに対し、IMR32細胞の生存は、NT−3 siRNAの処置後も影響を受けなかった(図18Bおよび18C)。
【0086】
第二のアプローチとして、本発明者らは、NT−3が内因性のTrkCと結合しないようにするために、従前に記載されている阻止TrkC抗体(Tauszig-Delamasureら, 2007)を用いた。図18Dおよび18Eに示されるように、カスパーゼ−3活性アッセイ(図18D)およびTUNEL染色(図18E)により測定した際、抗TrkCの添加はCLB−Ge2およびCLB−Vo1Moのアポトーシス細胞死を誘発した。この抗TrkC抗体はIMR32細胞に対しては効果が無かったので、この効果はNT−3/TrkCの阻害に特異的であった。阻止TrkC抗体を用いる代わりに、NT−3の捕捉にTrkCの組換えエクトドメインを用いた場合にも、同様のCLB−Ge2細胞死誘導が見られた(図19A)。TrkC/NT−3の相互作用の阻害に関連したNB細胞死が新鮮な腫瘍にも拡張可能か否かを調べるため、腫瘍および浸潤を受けた対応する骨髄の外科生検を部分的に分離し、さらに抗TrkC抗体とともにインキュベートした。この原発腫瘍および転移新生物はNT−3とTrkCの双方を発現し(図19B)、抗TrkC抗体に応答した細胞死の増加(カスパーゼの活性化により測定される)が検出された(図18F)。
【0087】
実施例9:NT−3/TrkC相互作用への干渉はTrkC媒介性の細胞死を誘発する
NT−3/TrkC相互作用への干渉に関連した細胞死を理解するには二つの異なる筋道がある。従来の神経栄養説によれば、観察された細胞死は、NT−3/TrkCの相互作用、すなわち、TrkCのキナーゼ活性を介して活性化されるMAPKまたはPI3K経路により誘発される生存シグナルの欠如に起因する「不履行」による死であり得る。依存性受容体の概念は、また違った、TrkCの発現が通常、良好な予後因子であるという事実により適合する見方を与える。このシナリオでは、NT−3とTrkC間の相互作用の遮断は、アポトーシスを能動的に誘発する非結合型のTrkCをもたらす。これら二つの可能性の選択を行うための第一のアプローチとして、CLB−Ge2細胞をTrkCのドミナントネガティブ変異体でトランスフェクトした後に抗TrkC抗体の処置によってNB細胞死を誘発した。このドミナントネガティブ変異体TrkC−IC D641Nは、そのキナーゼ依存性のシグナル伝達に影響を及ぼすことなく非結合型TrkCのアポトーシス誘導シグナル伝達を特異的に阻害することが分かっている(36)。このドミナントネガティブ変異体の発現は抗TrkCにより媒介されるCLB−Ge2細胞死を完全に阻止する(図20Aおよび図21A)。この知見をさらに裏付けるため、本発明者らは、siRNAによってTrkCがダウンレギュレーションされた状態で、NT−3 siRNAに関連したCLB−Ge2細胞死の程度を評価した。図21Bおよび21Cに示されるように、CLB−Ge2細胞におけるTrkCのダウンレギュレーションは、従来からの生存シグナル伝達経路の欠如によって予測されるように、細胞死との関連はなく、このダウンレギュレーションはNT−3 siRNAにより誘導される細胞死を完全に阻止し、従って、CLB−Ge2細胞で見られるNT−3のアップレギュレーションは、TrkCそれ自体により誘発されるアポトーシス誘導シグナル伝達を阻害することが証明される。この線に沿えば、ここでERKまたはAktのリン酸化の測定(図21D)により例示されるように、CLB−Ge2に阻止TrkC抗体を加えても従来の生存経路の低下には関連しない。さらに、TrkCカスパーゼ切断はTrkC阻止抗体によって増強される(図21E)。実際、従前に記載されているように、TrkCおよび依存性受容体は一般にカスパーゼにより切断され、この切断はそれらのアポトーシス誘導活性の前提条件である(36、37)。図21Eに示されるように、対照条件でも基礎レベルのTrkC切断が検出されるが、阻止抗体の添加はTrkC切断の増加と関連しており、この切断は一般的かつ強力なカスパーゼ阻害剤BAFの添加により阻止される。これらのデータを考え合わせると、NB細胞に見られるNT−3のアップレギュレーションは依存性受容体TrkCにより誘発されるアポトーシス誘導シグナル伝達を阻害することが証明される。興味深いことに、while CLB−Ge2細胞はTrkCにより誘導されるアポトーシスを阻害するためにNT−3のアップレギュレーションを選択したが、IMR32細胞はNT−3を発現せず、なお、進行性のNBに由来している。よって、本発明者らは、依存性受容体の仮説から予測されるように、IMR32細胞が違った手段によってTrkCにより誘導されるアポトーシスに対する耐性を選択しているのか否かを調べた。図22Bに示されるように、一般的細胞死インデューサーであるBaxの一時的トランスフェクションはIMR32のアポトーシスと関連しているが、TrkCの一時的トランスフェクションではIMR32細胞死を誘発できなかった。よって、NBの大部分はTrkCにより誘導されるアポトーシスを回避するためにNT−3をアップレギュレートしていたが、他のNB細胞は、TrkC細胞死シグナル伝達の不活性化を含む他の手段によってこの細胞死経路を逆に選択していた。
【0088】
実施例10:NT−3/TrkC相互作用への干渉はNBの予後および転移を阻害する
本発明者らは、次に、NT−3発現の高いNB細胞においてインビボにおけるNT−3/TrkCへの干渉を用いてNBの予後および転移を限定/阻害することができるか否かを評価した。10日齢のひな鳥胚の漿尿膜(CAM)におけるNB細胞の移植が、原発部位(すなわちCAM内)での腫瘍成長ならびに二次部位での腫瘍浸潤および転移(すなわち肺への転移)の双方を再現するニワトリモデルが開発されている(38、図15A)。第一のアプローチでは、CLB−Ge2またはIMR32細胞を10日齢のCAMに付加し、これらの胚を11日目と14日目に抗TrkCまたは無関連の抗体で処置した。その後、17日齢のひな鳥の原発腫瘍成長および肺への転移を分析した。図15Bおよび15Dに示されるように、抗TrkC抗体による処置は、特にCLB−Ge2移植CAMで原発腫瘍の大きさを有意に小さくしたが、無関連のイソ型抗体は影響を及ぼさなかった。この大きさの減退は、抗TrkCで処置した腫瘍におけるTUNEL染色の増強により示されるように(図15C)、腫瘍細胞のアポトーシスの増加と関連していた。さらに重要なことには、〜図15Eに示されるように、抗TrkCはCLB−Ge2移植胚における肺転移形成も軽減した(IMR32移植胚ではそうではない)。
【0089】
見られた抗腫瘍効果が特にNT−3とTrkCの相互作用の阻害によるものか否かを分析するため、NT−3 siRNAの静注を繰り返した際のCLB−Ge2移植CAMの原発腫瘍成長を分析した。図15Fに示されるように、NT−3 siRNA注射は、スクランブルsiRNAに比べて原発腫瘍の大きさを有意に小さくした。興味深いことに、NT−3 siRNAの代わりにTrkC siRNAを用いた場合には、スクランブルsiRNAを超える有意な変化は見られなかった。この結果は、NT−3結合の回避またはNT−3の阻害のいずれかの後に見られる腫瘍退縮効果が、従来の細胞内の生存促進シグナル伝達の欠如の結果とは対照的に、非結合型のTrkCにより媒介される能動的な細胞死シグナル伝達によるものであるという見方を強めるものである。
【0090】
実施例11:転移性乳癌ではNT−3が過剰発現される(図22参照)
図22は、転移性乳癌の58%でNT−3が過剰発現することを示す。
依存性受容体TrkCは、NB細胞の生存能および浸潤能を調節する条件付き腫瘍サプレッサーとして働く。この能力は特に、リガンドの利用能に応じてアポトーシスを誘導する。本発明者らは、予後の悪いNBで、癌細胞に選択的優位性を与え得る高い比(NT−3:TrkC)の発現を見出した(これにより癌細胞はTrkCにより誘導されるアポトーシスを回避できる)。NBは最も多い小児固形腫瘍の一つでなりながら、分子的基礎はほとんど理解されておらず、そのヘテロ性のために依然として治療は外科術と化学療法によっている。NT−3の結合を阻止することによりNT−3またはTrkCをターゲティングすれば、予後の悪いNB、特に、比(NT−3:TrkC)の高いNBに代替/補助療法がもたらされる。
これらの結果はまた、TrkC−NT3結合に拮抗し得る化合物が、細胞、特に神経芽腫におけるTrkC/NT−3受容体/リガンド対のアポトーシス活性の変化に起因する癌、特に神経芽腫を治療および/または予防するための薬剤の可能性のある薬剤として使用できることを証明する。TrkC−NT3に拮抗するこれらの化合物はこれらの癌細胞のアポトーシス死を誘導する。
【0091】
これらのデータを総て考え合わせると、一部のNBは高い比(NT−3/TrkC)に関連したNT−3の自己分泌産生を示すという見方が裏付けられる。この高い比(NT−3/TrkC)が、NT−3が制限された/存在しない状況で癌細胞により獲得される選択的優位性を与える可能性がある。
【0092】
ここで、本発明者らは、自己分泌NT−3発現が大多数の腫瘍細胞が、NT−3濃度が制限された領域で起こると考えられるTrkC誘導型の細胞死を迂回するために発達させたメカニズムである。興味深いことに、このNT−3の存在に対する依存性はTrkCに特異的であると思われ、この依存性を低下させるにはTrkCのドミナントネガティブで十分である(図20A)ので、他のTrk受容体、すなわち、TrkAまたはTrkBは関与しない。結論として、NT−3の高い発現は、NT−3/TrkCの相互作用の破壊による細胞死誘導に基づく処置に応答し得ると推定されるNB患者の新たなマーカーとなる。
【0093】
NT−3を発現する腫瘍細胞に対する阻止抗体のインビトロ細胞死効果と、インビボ抗腫瘍効果とは、このような治療アプローチに応答し得る癌のより大きなスクリーンを呼ぶ。よって、これらの結果から、NT−3またはTrkCのいずれかを阻止することによりNT−3およびその依存性受容体TrkCの間の相互作用を阻害することに基づく処置が、第一処置として、または標準化学療法と併用して、NT−3レベルの高い進行性のNBに罹患している患者の大多数に利益をもたらすことは明らかである。
【0094】
参考文献



【図6A−6B−6C−6D】

【図15E】

【図15F】

【図16A】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の予防または治療用の化合物の選択方法であって、以下の工程を含んでなる、方法:
a)ニューロトロフィン3またはその断片と、TrkC受容体またはその断片とを含む培地を取得する工程(ここで、
該ニューロトロフィン3またはその断片と、該TrkC受容体またはその断片とは、ともに特異的に相互作用して結合対を形成することができ、および/または
該ニューロトロフィン3またはその断片は、該TrkC受容体またはその断片、特に該TrkC受容体の細胞内ドメインの二量体形成または多量体形成を誘導できる)、
b)該培地と、供試化合物とを接触させる工程、
c)ニューロトロフィン3またはその断片と、該TrkC受容体またはその断片との間の相互作用の阻害を測定し、および/または
該化合物が該TrkC受容体またはその断片の二量体形成または多量体形成、特に該TrkC受容体の細胞内ドメインの二量体形成を阻害するか否かを判定する工程、および
d)工程c)の測定が、該化合物の存在下でニューロトロフィン3またはその断片と、TrkC受容体またはその断片との間の相互作用に有意な阻害を示す場合、および/または
工程c)における判定が、該化合物の存在下で該TrkC受容体またはその断片の二量体形成または多量体形成、特に該TrkC受容体の細胞内ドメインの二量体形成に有意な阻害を示す場合
に、その化合物を選択する工程。
【請求項2】
前記の予防または治療される癌が、腫瘍細胞がニューロトロフィン3を発現もしくは過剰発現するか、または高い比(ニューロトロフィン3/TrkC受容体)を発現する癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の予防または治療される癌が神経芽腫である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記の予防または治療される癌が転移性癌または進行性癌、特に予後の悪い癌である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、前記TrkC受容体はヒトTrkC受容体またはその断片、特に少なくともTrkC受容体の細胞外ドメインを含む断片である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞外断片がヒトTrkCまたは1995年7月27日付けのGenbank A.N.AAB33111に示されているアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有し、その天然変異体の最初の429個のアミノ酸残基を含むN末端断片を少なくとも含んでなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程a)において、
該TrkC受容体断片が、ニューロトロフィン3と相互作用することができるTrkC受容体の細胞外ドメインまたはその一部を含んでなるか、またはそのものであり、および/または
該TrkC受容体断片が、ニューロトロフィン3の存在下で二量体または多量体を形成することができるTrkC受容体の細胞内ドメインまたはその一部を含んでなるか、またはそのものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程a)において、前記ニューロトロフィン3または/および前記TrkC受容体が哺乳類、特にマウス、ラットまたはヒト由来のものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ニューロトロフィン3または/および前記TrkC受容体および/または供試化合物が直接または間接的に測定可能なマーカーにより標識される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程c)において
ニューロトロフィン3またはその断片と、該TrkC受容体またはその断片との間の相互作用の阻害の測定がイムノアッセイ(特に、ELISAまたはイムノラジオ・メトリック・アッセイ(IRMA))、シンチレーション近接アッセイ(SPA)、または蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって行われ、および/または
該TrkC受容体またはその断片、特に細胞内ドメインの二量体形成もしくは多量体形成またはその阻害が免疫沈降またはFRETにより行われる、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程a)において、前記培地が、それらの表面膜で、内因性のTrkC受容体または組換え型のTrkC受容体、特に少なくとも組換えTrkC受容体の細胞外ドメインを発現する細胞を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程a)において、前記培地が組換えTrkC受容体を発現する細胞を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程a)において、前記培地が、前記TrkC受容体をそれらの膜表面で内因的に発現し、かつニューロトロフィン3を発現または過剰発現する腫瘍細胞を含み、ならびに工程c)において、供試化合物の存在下でのニューロトロフィン3と、そのTrkC受容体との間の相互作用の阻害が、その供試化合物の存在により誘導されるアポトーシスまたは細胞死により測定される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
工程a)において、前記培地が、転移性腫瘍細胞、特にIMR32細胞、CLB−Ge1細胞、およびCLb−Vol細胞からなる群から選択される細胞を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
癌の予防または治療用の化合物の選択方法であって、以下の工程を含んでなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法:
a)内因性のまたは組換え型のTrkC受容体、または少なくともその細胞内ドメインを含んでなるその断片を発現する哺乳類細胞、好ましくは腫瘍細胞、より好ましくはそのTrkC受容体細胞内ドメインの二量体形成または多量体形成を呈する細胞またはそのTrkC受容体細胞内ドメインがニューロトロフィン3の存在下で二量体または多量体を形成することができる細胞を取得する工程、
b)該培地と、供試化合物とを接触させる工程(場合により、この培地はさらに、TrkC受容体の細胞外ドメインと相互作用することができるニューロトロフィン3またはその断片を含んでもよい)、
c)該TrkC受容体細胞内ドメインの二量体形成または多量体形成が供試化合物の存在下で阻害されるか否かを判定する工程、
d)場合により、供試化合物の存在が該哺乳類細胞の細胞死を誘導するか否かを判定する工程、および
e)工程c)における判定が、該TrkC受容体の細胞内ドメインの二量体形成または多量体形成の有意な阻害を示す場合、および/または工程d)における判定が該哺乳類細胞の細胞死を示す場合に、その化合物を選択する工程。
【請求項16】
原発腫瘍を有する患者において、原発腫瘍細胞を含む該患者の生検から、転移性癌、進行性癌または予後の悪い癌の存在を予測するためのインビトロ法であって、以下の工程を含んでなる、方法:
(a)該生検におけるニューロトロフィン3発現レベルまたは該生検における、ニューロトロフィン3発現レベルと、TrkC受容体発現レベルとの比を測定する工程。
【請求項17】
非転移性原発腫瘍生検または非進行性癌生検におけるニューロトロフィン3の発現に比べて、前記生検におけるニューロトロフィン3発現レベルの増加が、転移性癌または進行性癌の存在を示す、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
供試生検と、非転移性参照生検との間のニューロトロフィン3発現の比が2を超えることが、転移性癌の存在を示す、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
患者に対する抗癌処置の有効性をインビトロで判定するため、またはNT−3:TrkC結合の阻害に基づいて特定の抗癌処置に応答し得る患者のインビトロでの選択方法であって、以下の工程を含んでなる、方法:
(a)該被処置患者の原発腫瘍生検を取得する工程、および
(b)該生検におけるニューロトロフィン3発現レベルを測定する工程(ここで、該抗癌処置の有効性は該生検において測定されたニューロトロフィン3発現レベルの量の低下と相関しているか、または選択された該特定の抗癌処置に応答し得る患者が、処置前にそれらの生検で測定されたニューロトロフィン3発現レベルの量が対照患者のニューロトロフィン3発現レベルの量を有意に超え、かつ場合により、ニューロトロフィン3発現レベルが該特定の処置後に低下した患者である)。
【請求項20】
前記癌がニューロトロフィン3の過剰発現を誘導し、および/または転移性癌または進行性癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
測定されるニューロトロフィン3発現産物が、特に定量的リアルタイム逆転写PCR法により測定される、ニューロトロフィン3をコードするRNAである、請求項16〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
測定されるニューロトロフィン3の発現レベルが、特に前記ニューロトロフィン3タンパク質を特異的に認識することができる特異的抗体を用いた方法によるニューロトロフィン3タンパク質レベルの測定である、請求項16〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
原発腫瘍が神経芽腫の原発腫瘍である、請求項16〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
癌の予防または治療用の化合物を選択するためのキットであって、
ニューロトロフィン3タンパク質と特異的に相互作用して結合対を形成することができるTrkC受容体タンパク質またはその断片、好ましくは組換えタンパク質と、
該TrkC受容体タンパク質と特異的に相互作用して結合対を形成することができるニューロトロフィン3タンパク質またはその断片、好ましくは組換えタンパク質と
を含んでなる、キット。
【請求項25】
癌の予防または治療用の化合物を選択するためのキットであって、
TrkC受容体を発現し、かつニューロトロフィン3を発現または過剰発現する腫瘍細胞、特に腫瘍細胞系統に由来する、好ましくは確立された神経芽腫細胞からなる群から選択される、好ましくはCLB−Ge1およびIMR−32細胞から選択される細胞、および場合により、
TrkC受容体タンパク質と特異的に相互作用して結合対を形成することができるニューロトロフィン3タンパク質またはその断片、好ましくは組換えニューロトロフィン3タンパク質
を含んでなる、キット。
【請求項26】
下記からなる群から選択される、薬剤としての化合物:
請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法により選択された化合物、
ニューロトロフィン3と、TrkC受容体との間の相互作用を特異的に阻害することができ、および/またはTrkC受容体またはその断片、特にTrkC受容体の細胞内ドメインの二量体形成または多量体形成を阻害することができる、TrkC受容体の細胞外ドメインまたはその断片、またはニューロトロフィン3と結合することができるTrkCの細胞外ドメインを少なくとも含んでなる可溶型TrkC受容体、
特異的にニューロトロフィン3またはTrkC受容体に対する、特に、TrkC受容体の細胞外ドメインまたはTrkC受容体の細胞外ドメインと相互作用することができるニューロトロフィン3断片に対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体、および
好ましくはインビボで、細胞内でNT3の発現を阻害することができるsiRNA(低分子干渉RNA)核酸。
【請求項27】
患者において、ニューロトロフィン3依存性受容体により誘導されるアポトーシスを回避する選択的優位性を獲得した腫瘍細胞のアポトーシスまたは細胞死を、好ましくはニューロトロフィン3レベルを引き上げることによって、誘導するための処置方法であって、それを必要とする患者において、この腫瘍細胞の選択的優位性を阻害することができる化合物を投与することを含んでなる、方法。
【請求項28】
患者において癌を予防または治療するための方法であって、それを必要とする患者に請求項26に記載の化合物を投与することを含んでなる、方法。
【請求項29】
ヒトを含む哺乳類において癌の予防または治療用の薬剤の製造のための、請求項26に記載の化合物の使用。
【請求項30】
前記癌が、転移性癌、進行性癌、または予後の悪い癌である、請求項28もしくは29に記載の方法または使用。
【請求項31】
前記癌が神経芽腫である、請求項27〜30のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項32】
前記癌の原発腫瘍細胞がニューロトロフィン3を発現または過剰発現する、請求項22〜31のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項33】
患者において転移性癌、進行性癌、または予後の悪い癌を識別するためのマーカーとしてのニューロトロフィン3発現のレベルの使用。
【請求項34】
前記癌が神経芽腫である、請求項33に記載の使用。

【図17】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図18E】
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【図18F】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図20D】
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【図20E】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【公表番号】特表2011−524516(P2011−524516A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509999(P2011−509999)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056253
【国際公開番号】WO2009/141441
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【出願人】(504217063)
【出願人】(510307222)
【氏名又は名称原語表記】ECOLE NORMALE SUPERIEURE DE LYON
【出願人】(596096180)ユニベルシテ・クロード・ベルナール・リヨン・プルミエ (16)
【Fターム(参考)】